緩和ケアと緩和医療、違いは?
 山崎章郎先生は「緩和ケアとは、患者・家族を中心にした医療であり、介護であり、福祉でもあり、宗教的支援でもあり、ボランティアによる支援でもある。要するに、緩和ケアにおける医療、すなわち緩和医療は緩和ケアの一部であり、緩和ケアと緩和医療はイコールとはいえない」 と、述べられているようにまったく別物なのです。そして、緩和ケアをしていくなかで、症状のコントロールが大前提であり緩和医療の知識は重要だと思われます。

 星野恵津夫先生は「漢方は、本来あくまで症状緩和を追求する医学であり、疾患自体の治癒よりも、苦痛緩和がその最終目標である」と述べられています。つまり症状を緩和する緩和医療と目標は一致しているのであり、漢方を積極的に導入することにより、よりよく症状の緩和が得られる可能性があると思われます。以前より考えるようになった担がん長寿、残念ながら治癒が望めない進行度であってもがんとの共存が維持できれば安定した状態で過ごすことができると思われます。その一つのアプローチ法として漢方薬があるのではと私は考えています。

 「補剤」とは、がんなど消耗性疾患や加齢による気力・体力の低下した患者に有効とされる漢方薬のことである。がんの進行に伴い、体力低下による易疲労感、全身倦怠感、食欲不振、不眠、身体の冷え、発熱、下痢、便秘、咳、息切れなど、消耗的な症状が多くの患者さんに出現する。このような場合に、補剤が適応になると思われます。補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯は三大補剤とよばれ緩和医療において用いられることが多く、免疫増強作用や抗ストレス作用をもつことが共通している。がんの告知や経過中に起きるうつ状態や不眠などの精神症状、そして胃部不快感などの消化器症状を伴い食欲不振がある場合には補中益気湯が効果を発揮し、早期より開始すべき薬剤と考えられます。また、がんの進行とともに生じる体力低下や消耗状態、全身倦怠感には十全大補湯がもっとも適応があり、がんによる体力低下とともに咳、呼吸困難(感)などの呼吸器症状が伴う場合は、人参養栄湯を用いると効果が期待できるとされている。
まとめると、
補中益気湯:抑うつ、不眠、胃部不快感、食欲不振
十全大補湯:体力低下、消耗状態(貧血)、全身倦怠感
人参養栄湯:体力低下、咳、呼吸困難(感)
 と、今回は補剤について簡単にまとめてしまいましたが今後も緩和医療における漢方薬の適応について調べていきたいと思います。

参考図書
がん漢方 北島政樹監修、今津嘉宏編 南山堂
緩和ケアにおける漢方薬の役割とその実際 細川豊史 ペインクリニックVol.32 No.12 1797-1804, 2011