終末期を迎えつつある在宅療養中の患者さん、自分の経験が豊富ではないためか過活動型せん妄を来す頻度って少ないように思ったりしています。でもこの論文では鎮静の適応病態として最も多いのがせん妄であると報告しています。在宅であっても症状緩和が困難な場合、緩和ケア病棟に入院することなく鎮静による苦痛緩和が行えるようです。でも、ご自宅で最期を迎えるってまだまだ一般的ではないような・・・。

Palliative Sedation in Patients With Advanced Cancer Followed at Home : A Prospective Study 
J Pain Symptom Manage 
2014 May;47(5):860-6. 


(背景)
 死を迎えようとしている終末期の患者の中には症状緩和の治療に抵抗性の耐え難い苦痛を経験することがある。死が近づくに従って症状のコントロールが困難となることがあり 、安らかな死を迎えるという目標が不成功になることがある。緩和的鎮静(PS)は積極的な治療努力にもかかわらず終末期がん患者の苦痛を軽減させることが出来ない時に、難治性症状を取り除くのに有効な治療法だと考えられている。ヨーロッパ緩和ケア協会の定義によれば、PSは耐え難い苦痛を軽減するために人生の最期の日に鎮静薬を用いることである。よりいっそう明確な定義は、死亡時に耐え難い症状をコントロールするために非麻薬性薬物を用いることである。この緩和的実践は、適切な場合や実存する患者の必要性に基づいたその時点での意思決定よりもむしろ人口、文化、人種、宗教因子、制度上の政策、国の法律に依存して、2%~52%とさまざまな頻度で多年にわたって行われてきた。
 がん患者は特に人生の数週間は自宅で自分の時を過ごします。人生の最期の日、病院に入院するかまたは自宅で留まるかは臨床的必要性よりも利用できる資源や個人の好みに依存している。
 PSは在宅での施行することができる。システマティック・レビューでは、PSの頻度はさまざまで13~35%である。在宅で死を迎えた患者の以前の後ろ向き検討ではPSを施行した頻度は13.2%であった。 しかしながら、適応、平均施行期間、PSに用いた薬剤を含めた多くの情報は文献から利用できるものはなく、または明白に構成されていない、またはPSの経験的な定義が採用されていない。報告している医療施設間でPS施行頻度の大きい変動は、PSを定義するために採用されている適切な基準が不足していることを示している。在宅ケア-イタリーグループは在宅療養している患者から収集した情報を広め、実施していくことを確立した。

(目的)
 この研究の目的は在宅で施行されるPSのプロトコールを評価することである。

(方法)
 二か所の在宅緩和ケアユニットで合計219名の患者が前向きにPSプロトコールを評価するために検討された。検討方法は疼痛、呼吸苦、精神的苦悩について、PS開始時より1日間隔でNRSにより評価した。同時に、薬剤と投与量につき記録した。プロトコールはミダゾラムの段階的投与に基づいている。

(結果)
 合計176名の患者が在宅で亡くなり、PSは24名(13.6%)に施行された。
(文献から)
img110(文献から引用)

若年患者のほうが処置をうけた頻度が多かった(P=0.012)。PSを開始した主要な理由は、活動性せん妄(20名)と呼吸困難(4名)であった。平均施行期間は42.2±30.4時間であり、ミダゾラムの平均投与量は23-58mg/日であった。在宅療養チームは全例に最上または良好、患者の親類は1例を除いて最上または良好であると判断した。
img111(文献から引用

img112
(文献から引用

(結論)
 在宅でのPSは施行でき、人生の最期の日における治すことが困難な症状を軽減させるのに効果的な手技である。それぞれ異なった在宅療養システム、ホスピス、急性期緩和ケア病棟に存在する相違点について評価することは興味あることであろう。最後に、さらなる情報が緩和ケア地域ネットワークにより提供される特定のサービスでのさらなる情報が集められるべきである。