緩和ケア病棟で終末期を迎えている患者の介護者が感じる死ぬことの質、どういったことが影響するのでしょう。当然、症状がコントロールされていて苦痛の自覚なく過ごすことは必須です。介護者にとって、質の高いケアを受ければ満足度は高くなると考えられます。では、質の高いケアってどのように評価したらいいのでしょうか。数値化は出来ないため、介護者の満足度からの評価になるのでしょうか。「質の高いケアとは」に関連する論文を検索する必要があるようですね。

Factors That Affect Quality of Dying and Death in Terminal Cancer Patients on Inpatients Palliative Units : Perspectives of Bereaved Family Caregivers
J Pain Symptom Manage. 
2013 Apr;45(4):735-45. 


(背景)
 緩和ケアとは苦しみを取り除くことに努めることであり、ホスピスケアにおいて重要な部分である。ホスピスケアとは、終末期患者を全般的に管理することに主眼をおいている。終末期患者を治療するための緩和ケア病棟
(PCU)が増加している。したがって、症状緩和が得られるために、PCUで治療を受けている終末期がん患者のケアと生活の質(QOL)について評価することは重要である。多くの患者は身体的もしくは精神的に参加することが困難であり、また参加しても偏りが生じるかもしれない。代わりに、しばしば家族の調査が行われている。
 ホスピスのケアの質と満足度に関連した因子について検討した以前の研究では、ホスピスのより長期の滞在により、より良い評価が得られていることが示されている。ホスピスに入院している終末期がん患者のQOLに関連している因子についてのある研究において、介護者と過ごすこと、痛みの強さ、全身状態、スピリチュアリティー、社会的支援がQOLに関しての38%の多様性を説明可能にしていることが判った。「善き死」に関連した因子についての研究はたったの2,3しか存在しない。今日まで行われた研究において、善き死の概念の構成要素、死に行くことに関連した社会人口統計学的、医学的要素について調査されてきた。Patrickらは、健康管理の構造、過程に影響する結果としての死ぬことと死の質を評価するための概念モデルを提案した。そのモデルには、症状、個人医療費、死の準備、死の瞬間、家族、治療法の選択、そして人全体としての概念(whole person concern)が含まれている。しかりながら著者らの知っている限りでは、この研究は死ぬ質そしてとくに緩和ケア病棟におけるがんケアの質に関連した因子を評価した初めての研究である。以前の研究では、がんケアの構造と過程を代表とする因子が如何にして善き死といった結果に関連しているのかについては明らかにしていない。

(目的)
 この研究の目的は、緩和ケア病棟に入院している終末期がん患者の死ぬことと死の質に関連する因子を明らかにすることである。

(方法)
 データーは終末期がん患者の死別した家族の介護者570名より収集した。全ての患者は登録され韓国の厚生省により指定を受けた40のPCUの1つで亡くなった。著者らはPCUへの紹介が認められたタイミングで評価した。終末期がんケアの質に関してはCare Evaluation Scale(CES)で、死ぬことと死の質に関してはGood Death Inventory(GDI)で評価(0~100、数値が高いほど質が良好)した。

(結果)
 ほとんどの患者は60歳以上(74.6%)、ECOGのPS3~4(74.4%)、既婚者(96.3%)、入院時精神状態が清明(65.6%)であった。ほとんどの介護者は60歳未満(71.4%)で女性(63.5%)であった。
img169(文献から引用)
 ホスピス滞在期間は平均15日であった。家族の合計72%はPCUへの紹介のタイミングは適切であったと、24%は遅すぎたと報告した。身体ケア(48.4%)、自己決定の援助(45.4%)、ケアの連携と一貫性(50.1%)への満足度は介護者の約半数により評価された。精神的実存的ケアへの満足度は介護者の60.4%に評価され、家族の負担への不満足は介護者の65.5%に評価された。
img170(文献から引用)
 死ぬことと死の質に関連した因子については単変量解析により明らかになった。患者の年齢、性別、ECOGスコア、終末期診断の理由、そして入院時の疼痛、家族介護者の年齢、緩和ケアセンターのタイプ、紹介タイミングの理解、PCU入院期間、そして身体的・精神医学的快適さを含めた死ぬことと死の質に影響するCES、ケアの場、自己決定、医療従事者との関係、家族との関係、そして精神的実存的幸福度である。
img171(文献から引用)
 表4は死ぬことと死の質に関連する因子の多変量解析結果が示されている。PCUへの紹介の時期が適切であるのは身体的、精神医学的快適さに関連していた。地域密着型PCUの利用は
身体的・精神医学的快適さとケアの場を評価している高い満足度に関連していた。質の高いがんケアの満足感はより良い死ぬことと死の過程に関連していた。高齢の患者は身体的・精神医学的快適さと家族の関係に関して好んでいると報告する傾向にあった。女性患者は男性患者と比べ、ケアの場に満足度が低い傾向であった。信仰があることは家族との関係と精神的実存的幸福度に関連していた。高齢介護者はより若い介護者よりも家族との関係を好んでいると報告しがちであった。
img172(文献から引用)

(結論)
 PCUへの紹介の適切なタイミングとPCUにより提供されるがんケアのより高い質は死ぬことと死の質のより高い質と関連していた。研究の結果、終末期がん患者の死ぬことのより高い質を達成することをめざす介入の発展のガイドとなるであろう。