緩和ケア領域における各種疾患の放射線学的アプローチについてもレビューです。苦痛症状改善のための放射線治療の選択、患者さんに負担がかからない程度に積極的に考慮したいですよね。しかし、現状の制度ではホスピスや緩和ケア病棟に入院されている患者さんには適応しにくいようにも思えます。この点は、今後の改善事項として期待したいです。

Role of Radiation Therapy in Palliative Care of the Patient With Cancer.
J Clin Oncol. 
2014 Sep 10;32(26):2913-9.


(背景)
 放射線治療は1世紀以上もの間、がんによって引き起こされる症状に対処してきた。そして、皮膚病変を縮小させるという
当初のゴールは今日では無数の緩和的適応に拡大されている。放射線治療は、上首尾の、効率的な、広く受け入れられる、代価に見合った介入であり、緩和的腫瘍学的治療の適切な提供に重要な治療法である。対照的に、緩和ケアは相対的に医学専門分野で、21世紀になってからその重要性が増してきた。WHOでは緩和ケアを「疼痛やその他の苦痛、つまり身体的、精神社会的、スピリチュアルな苦痛を早期より同定し、的確に評価し治療することによって苦痛を防止し緩和することによって生命にかかわる疾病に関連した症状に直面している患者、家族の生活の質(QOL)を改善させるアプローチ」と定義している。この定義に基づくと、放射線治療を受けている多くの少数派言い換えればまさに大多数の患者は緩和ケアの介入によって利益を得るであろう。そして、患者はしばしば何週間にもわたって毎日放射線治療の処置を必要とすることになり、この時間枠があるために放射線腫瘍チームは放射線治療による治療ゴールを超えた緩和的ゴールを評価し取り組むことが可能となっている。放射線腫瘍医は彼らが最も必要な時に、緩和ケア専門医、疼痛医療提供者、そしてホスピス専門医と関わりをもつというすぐれた機会にしばしばめぐりあう。

・放射線治療の目的:問題の要点
 放射線腫瘍医は慣例として放射線治療のゴールについて2つの臨床的決定を行う、つまり治癒的か、緩和的かである。1964年のJAMAに掲載された重要な論文の中で、Parkerは、緩和的放射線治療を運営するに当たっての別の規則について記述している。つまり、放射線治療の初めの目標が緩和であるとき、新しい立場の規則が適応されるべきである。起こるかもしれない重大な合併症もしくはゆっくりと定型的経過で生じる治療の有害反応でさえ、もはや受け入れられない。全部の治療時間は短くあるべきである。コストは最小限であるべきである。治療の利便性を考慮されるべきである。
 外科、放射線治療手技、そして全身療法の進歩をふくめたがん治療法の進歩で、治癒的ゴールと緩和的ゴール間の差異は放射線治療を受けている多くの患者において不明瞭になってきている。固形がんの転移性疾患の患者における治療のゴールは一般的に緩和的ゴールである。しかし、特定の状況下ではあるが、全身療法の改善により、選り抜きの患者に
全生存期間が延長するのが認められる。さらに、わずかな転移しか認めない患者の治癒的ポテンシャルについての問題が生じた。これらの領域のおのおのにおいて、症状を引き起こしている病変の局所制御はより重要で、高度な等角治療手技または、長い線量分割計画の研究に至っている。対照的に切除不能膠芽腫または膵がんの患者は抗がん治療にも関わらず予後が悪く、再び放射線治療の目的に関する問題が起こっている。確かに、正確な予後判定にいどむのは患者の放射線治療が”治癒的目的”、緩和的目的”、またはそれらの間とみなされるかどうかを決定するのに重要である。

・予後判定の困難さ
 予後を基に治療の目的を決定することは非常に複雑である。この課題は、患者の全身状態や併存疾患の状態といった実際に患者の持つ様々な要因によってより複雑になっている。患者の予後について質問された時、医師はよく3つかそれ以上の要素により生存期間につき過大評価している。がん以外の疾患(例えば、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患)の緩和の患者よりがんの患者の生存を予測することは容易であるが、選択した治療法が積極的であれば生存を確実に予測することは課題となっている。1つの現存する予後ツールは、3つのリスクファクターを持つモデルを使用している。すなわち、非乳がん、骨転移以外の転移巣、カルノフスキーパフォーマンスステータスが60以下(もしくはECOG PSが2以上)から構成されている。これにしても他の予後モデルでもさらなる改良が必要であるにしても、これらの利用が増加すれば患者の治療が前向きになる直接的な手助けとなりうるだろう。

・緩和ケアの
放射線腫瘍学に対する認識
 緩和ケア専門医による異なった2つの調査で、放射線治療と放射線腫瘍医に対する彼らの展望について明らかにされている。国立ホスピス緩和ケア協会の回答者は、ホスピス患者に対する放射線治療の供給の障壁、つまり治療のコスト、搬送の困難さ、短い患者の平均余命、そして専門医間の教育の過ちについて説明している。ホスピスに入院してくる患者の最も一般的な診断はがんの残存であるが、これらの要素はホスピスに入院している患者で放射線治療を受けている患者は全体の3%以下である主な理由であると考えられている。放射線治療のコストとホスピスの1日あたり約120ドルの料金の不釣り合いは放射線腫瘍医が不本意ながらも疼痛を伴う骨転移を合併しているような適合する患者に対してのみ1回照射の放射線治療を提案することに限定していた。別の調査では、緩和ケア専門医は放射線腫瘍医自身が思うほど、放射線腫瘍医を”緩和ケアチームの一員”または”よきコミュニケーター”とは記述していない印象であった。これらの認識の不一致は、多くの施設で患者の共同治療は放射線腫瘍医とホスピス・緩和ケア専門医に共通しているが、同時に治療を行うより逐次的な治療をし続けていることを説明している。
img217(文献から引用)

(共通の臨床状況)
 治癒を目的とした治療計画は、総計40~80Gy(腫瘍の組織型に依存)となるよう1日につき1.8~2.0Gyの分割照射を行う方法が発展してきたけれども、緩和ケアの経過は終末期に近づきつつある患者の旅行と治療に費やす時間と努力を最小限にするようになっている。付け加えて、少分割照射による治療は晩期合併症のリスクが高くなることに関連するかもしれないが、寿命が限られている緩和ケアの患者を注意深く選択することによって晩期合併症のリスクは最小限となる。したがって1~10分割による8~30Gyの放射線治療は、広範囲に及ぶ臨床場面に有用であることが示唆される。さらに、高線量過分割照射療法は総照射線量が同じなら晩期合併症が高リスクになることは事実であるが、しばしば見過ごされているかまたは無視されていることは事実で、線形方形モデルによれば、10分割30Gyまたは20分割40Gyよりも8Gy1回照射のほうが晩期合併症のリスクは低い。そのうえ、
8Gy1回照射と比較して10分割30Gyにおいて急性毒性が高い頻度で起こっている。
 緩和的放射線治療の線量選択は、予後ばかりでなく全身状態、併存疾患、急性毒性のリスク、前治療内容、全身療法、そして患者の望みに依存している。治療のゴールはがんの原発巣、転移巣、またはその両者により引き起こされている症状を緩和することかもしれない。
img218(文献から引用)
img220(文献から引用)
一般的に、より短い余命に相互関連する変数には、患者に関連した要素(全身状態不良、高齢、有意な体重減少、重篤な併存疾患)、がん腫(転移性疾患、急速に進行する組織型)、または治療(全身療法の反応不良、放射線治療歴)が含まれている。

(原発巣から生じている局所症状)
・原発性脳腫瘍
 最も多い原発性悪性脳腫瘍は、高悪性度星状細胞腫で短い寿命に関連し、痙攣、頭痛、倦怠感、人格変化、記憶の変化、言語障害、嘔気、そして焦点性運動欠落(focal motor deficit)といった衰弱させるような症状を引き起こす。治癒を目指した治療の状況下でさえ、緩和ケアはこれら患者
ほとんど全てにおける治療において重要な役を担っている。外科的切除、補助療法としての放射線療法と抗がん化学療法を首尾よく完了した患者は、一般に最初に腫瘍が存在していた部位の内あるいは近接する部位への再発にみまわれるのが一般的である。脳部分的照射野に、約60Gy1回1.8~2.0Gy分割照射の外部照射療法は患者が外科的切除を受けたかどうかにかかわらず多形膠芽腫の1次治療の標準療法として考慮されている。70歳以上又は全身状態不良の若年者、重要な併存疾患または疾患の頭蓋外への拡がりを認める患者において、総線量34~40Gyを10~15分割照射する短縮法が適切である。局所再発した患者は、標準療法として考慮されるわけではないが神経毒性のリスクに注意を払いながら緩和目的に再照射を時折行う。

・頭頸部がん
 頭頸部がんのカテゴリーはいくつかの組織型を呈するような多彩な解剖学的部位からの腫瘍を含んでいるが、もっとも多く診断されるのは口腔粘膜、咽頭、喉頭を原発とする扁平上皮がんである。よく認める症状として、嚥下困難、減少した発声(声が小さくなる)、疼痛、出血、栄養失調、分泌物の著増、咳、そして息切れがある。緩和的放射線治療により、いくつかの少分割照射のいずれか1つで高い奏効率が得られている。全身状態不良または重大な併存疾患を合併している患者はいわゆる”4方向照射”レジメンが効果がある。そのレジメンは引き続く2日かけて
4分割14Gy照射することで、4週間隔であと2回同じ線量を繰り返し行うことで、総線量42Gyが可能となる。放射線治療歴のある局所再発を来した患者の中には再照射を行うことにより良好な転帰が得られるが、適切な患者選択はことさらに重要である。

・局所進行、再発性乳がん
 乳がんは先進諸国の女性において最も多くそして2番目に致命的ながんで、放射線治療は局所進行乳がんにおいても、再発乳がんにおいても重要な役割がある。マンモグラフィーの時代において、切除不能の原発がんの患者に遭遇することはまれであるが、以前の報告では切除不能の原発部位の治療として放射線治療が記載されている。さらに、放射線治療は潰瘍形成、出血、腕の浮腫、又は上腕神経叢障害を含む症状に苦しんでいる女性に重大な症状軽減を与えている。総線量を増やせば局所制御がよくなる傾向にあるが、局所進行又は局所再発を認める女性に対する最も適切な緩和的線量のレジメンは十分には解明されていない。しかしながら、
総線量が60Gyを超えると、線維化、壊死、リンパ浮腫、そして上腕神経叢障害といった毒性のリスクが増加する。局所治療後の乳がんの孤立性局所再発を認める患者はその対処にやりがいを示している。転移性疾患の危険性をはらんでいるものの、多くの人はそれでも尚延長した余命を楽しんでいる。抗がん化学療法に抵抗性の再発を来した症例において、中等度の線量による放射線治療の再治療は制御できない出血といった悲惨な症状を安全に制御することが出来ることを示唆するような報告が限定的ではあるが存在する。温熱療法は乳がんの胸壁再発に対する放射線治療に付け加えられた補助療法として研究されており、その組み合わせにより完全奏効率の改善が認められてきている。

・非小細胞肺がん
 放射線治療は局所進行または転移性非小細胞肺がんにより引き起こされる胸腔内症状を緩和する。その症状として、呼吸困難、咳、喀血、胸痛、嚥下困難、上腕神経叢障害、そして上大静脈症候群がある。
局所進行または転移性非小細胞肺がん患者の胸腔内症状を助けるために最適な分割照射計画を明らかにするのを試みる前向き無作為化試験が多数行われているにもかかわらず、問題は残っている。それらの研究で、10またはそれ以上の分割による30Gy照射レジメンは短期照射と比較すると、食道炎といった短期副作用が増加するという代償を払って症状コントロールや生存期間の僅かな改善しか得られないことを示唆している。さらに、5分割20Gyまたは2分割1週間離して総線量17Gy照射といった少分割照射は胸腔内症状を効果的に緩和し、余命の短い又は全身状態不良の患者のために、又は治療のための旅行回数を最小限になるよう希望されている患者を対象に考慮されるべきである。今のところ、逐次的抗がん化学療法は効果的かもしれないが、同時抗がん化学療法をこの患者群で考慮されるべきことを示唆する研究は存在しない。

・胃腸がん
 食道、胃、胆道、そして直腸がんは外部照射による放射線治療により首尾よく緩和されることが可能である。腫瘍により引き起こされる症状でよく認めるのは、疼痛、出血、潰瘍形成、圧迫または閉塞である。一般的に胃腸がんにおける緩和的治療のゴールは、しばしば管腔構造開存の維持に焦点をあてている。食道がん患者の症状は外部照射による放射線治療、小線源治療またはその両者と抗がん化学療法、レーザー治療、またはステント挿入を組み合わせて十分に治療されているだろう。外部照射による放射線治療により、局所進行そして切除不能胃がんによる出血やその他の症状は最小限となっている。胆管がんからの胆管閉塞を来した患者にとって、ステント挿入と外部照射による放射線治療、腔内小線源治療、またはその両者の組み合わせにより症状の軽減が増加する。緩和的切除術が行えないまたは希望されない直腸がん患者は、積極的に総計40~60Gyの緩和的線量で治療されうる。全身状態不良または予後不良の患者はフルオロウラシルによる抗がん化学療法と同時に3週間以上かけて、6分割30Gyの短期照射法にて症状の軽減を得ることができる。

・泌尿器系がん
 泌尿器系がんは身体の似た解剖学的部位から生じているが、生物学的特性と症状が異なっている疾患の多様な集合である。一般的に、泌尿器系がんは出血、疼痛、尿路感染、尿意頻数、排尿障害、血尿、腎盂腎炎、尿閉または閉塞、腸管閉塞、または下肢浮腫といった窮境を引き起こす。前立腺がんに対するホルモン除去療法、膀胱がんに対する抗がん化学療法といった全身療法はこれら疾患の局所徴候をコントロールする点において重要である。緩和的放射線治療は、出血、疼痛、閉塞を改善させるために積極的に加えられている。膀胱がんによる局所症状を認める患者での、10分割35Gy照射と3分割21Gyの無作為化試験では、効果を認めたが同様の症状コントロール率であることが示されていた。このことにより、高線量治療はこれら患者にとって付加的要素はないことが示唆された。去勢抵抗性前立腺がんで局所徴候の認める患者には、1回2.0~2.5Gy、総量45~60Gyの間の放射線治療によって良好な症状改善が得られている。

・婦人科がん
 局所進行又は切除不能婦人科がんの患者は、出血、疼痛、性交疼痛、結腸又は膀胱閉塞、腎機能障害を伴った尿管閉塞、下肢浮腫、又は
 瘻孔といった症状に苦しんでいるだろう。切除不能、局所進行、又は再発性子宮頸がんまたは子宮内膜がんの患者にとって、外部照射による放射線治療または小線源治療により止血が得られることがある。全身状態不良(PSが低い)の患者は少分割照射の治療が効いて症状がよくなるだろう。放射線治療腫瘍グループ(Radiation Therapy Oncology Group: RTOG)による研究で3.7Gy外部照射を2日間かけて4回行い、計14.8Gyを2~6週間隔ごとにさらに2回行い総量44.4Gyまで照射する治療法の良好な効果と副作用について示している。これら4分割照射の間隔があることで、患者の体を考慮に入れて症状反応や、全身状態の変化を申し立てることが出来る。より新しいphase1試験において、2日間かけて1日2回の照射で総線量が最高18Gyの線量まで上げて照射する治療法の良好な緩和的軽減、耐容性が確かめられている。
 婦人科的疾患の骨盤内再発に苦しんでいる患者は、以前の骨盤腔内の放射線治療歴に基づいて緩和的治療を受けることができる。根治的子宮摘出または骨盤内臓摘出は、骨盤内再発をきたした患者の治療としては理論的にはオプションになりうるかもしれないが実臨床で行われるのはかなりまれである。放射線治療歴のない患者において、外部照射による放射線治療に小線源治療を併用し治癒を目指す線量を照射する救援療法は適応になる。以前の骨盤内放射線治療歴のある患者において、解剖学的に以前の高線量照射部位外に限局し病変部位が小さい場合に限定される。

(転移性疾患による症状)
・骨転移
 原発性腫瘍の多くは、骨格へと拡がって行く傾向があり、、特に乳線、肺、甲状腺、腎臓、前立腺、または骨髄のプラズマ細胞から発生する原発性腫瘍に頻度が高い傾向にある。骨転移の症状としてよく認めるのは、疼痛、病的骨折、または脊髄圧迫である。疼痛医療のレジメン、外科的安定化、骨を強くする薬剤を含めた全身療法、放射性医薬品、といった他の処置を適切に併用すれば
外部照射による放射線治療は、疼痛ある骨転移にとって最も効果的なそして耐容性が良好な治療の構成要素となる。多数の無作為化試験で、外部照射による緩和的放射線治療開始から3~4週後には、60~80%が部分的に疼痛緩和が得られ、30~50%は完全に疼痛緩和が得られたことが報告されている。最近の試験の結果もまた、疼痛を伴った前治療歴のある骨への再照射により患者の約半数において疼痛の緩和が得られていることを確認している。
 多数の前向き無作為化試験で、骨転移に対する分割照射の計画の疼痛軽減の同等性について評価している。その分割照射法として、10分割30Gy、6分割24Gy、5分割20Gy、そして8Gy1回照射が含まれている。単発照射の利便性は明らかであるが、同部位への再治療率は多分割照射を受けている患者で約8%、単発照射を受けている患者で約20%である。椎体への治療を受けている患者での後期脊髄耐容性について評価したときでさえ、8Gy単発照射での明らかな有害作用は示されなかった。 さらに1年以上生存したグループでの検討で、長期照射と比較して8Gy単発照射後では疼痛コントロールの点で劣っていないことが示されている。
 脊椎骨から発生した腫瘍の骨外浸潤により引き起こされる脊髄圧迫という特別な状況は腫瘍学における緊急事態で特別な配慮と管理に値する。疼痛は通常脊髄圧迫の数日から数か月前によく認めるが、脱力、感覚欠損、そして腸管と膀胱の失禁といった神経障害徴候の発症は、迅速な認識と長期間機能維持のための機会を最大限にする介入を必要としている。管理の第一歩は浮腫を軽減するコルチコステロイドの開始であり、そしてその後すぐさま、外科的減圧に続いての放射線治療か?放射線治療単独か?の選択についての議論は行うべきである。外科的減圧の利益は患者の年齢が増加するにつれ減少するが、外科的減圧を受けた患者はおそらく歩行が維持されるであろう。推奨された外科療法の選択は、全身状態不良によって示唆される制限、または腫瘍の進展による限られた余命と生物学的行動とのバランスによって行われるべきである。最近の研究で余命が短い患者は8Gy単発照射がうまくいくだろうことが示唆されているが、初回放射線治療を受けた患者は一般的に10分割30Gy照射といった多分割照射に反応する。

・脳転移
 脳転移は悪性疾患のよくある兆候でがん罹患率と死亡率の重要な原因である。多くの予後指標は脳転移のある患者の生存期間を予測ために進歩してきた。その予後指標として近年ではGraded Prognostic Assessmentがある。それは異なったがん腫の患者を、年齢、カルノフスキーパフォーマンススコア、脳転移の数、頭蓋外転移の有無を含んだ予後基準の合計に基づいて0~4のスケールで点数化するものである。これらツールそれぞれは生存期間を予測するばかりでなく、推奨する治療において開業医を援助する。これら予後因子による生存期間が2.8~25.3ヶ月の範囲で与えられたなら、思いやりのある緩和ケアはそれら患者にとって最高のものとなる。
 いろいろな臨床的アプローチが脳転移のある患者の管理に用いられていて、American Society for Therapeutic Radiology and Oncology(ASTRO)はこのトピックのガイドラインを刊行している。局所療法(外科的治療や放射線手術)と全脳照射の組み合わせのいくつかを行うことの一定の優位性の明白な根拠は存在しないのに対して、治療はそれを受ける患者にとって理想的な組み合わせを考慮し施行されなければならない。外科的治療または放射線手術に全脳照射を追加することは、生存期間に有利な点を与えない、そして無作為化試験において認知機能やQOLに対して有害作用を引き起こしていることが観察されている。予後不良因子があり限られた余命である患者にとって、全脳照射を行うことは有益性においては限定的である。全生存期間または症状コントロールにおいて、10分割30Gy照射または5分割20Gy間で相違点が証明されないならば、より短い期間の照射法は限られた余命の患者にとって利便性を最適化するには合理的である。予後不良の患者にとって、デキサメサゾンや疼痛治療薬の使用を含めた支持療法は賢明である。