ジャーナルの最新号のletterから選択した論文です。全身状態が不良の患者さんの不眠への対応、経口摂取も困難なことも多く難渋します。そのような場合でのベンゾジアゼピンの注射製剤の皮下投与の有効性について述べられています。ベンゾジアゼピンとしてミダゾラムとフルニトラゼパムが選択されていて両者とも一回の投与で半数以上で6時間以上の睡眠が得られたようです。
施設ホスピスでは容易に行うことが出来ますが在宅では医療スタッフが不在であり皮下投与であっても困難のようにも思えます。在宅で療養している経口摂取困難例での不眠治療はどのようにするのでしょうか?適応外使用法の舌下投与が手技的に簡単であり選択されるのでしょうか?日本緩和医療学会のニューズレター第48号に「緩和ケアにおける代替投与経路ー舌下投与の有効性ー」ってタイトルで報告されています。http://www.jspm.ne.jp/newsletter/nl_48/nl481205.html


Single-Dose Subcutaneous Benzodiazepines for Insomnia in Patients With Advanced Cancer
J Pain Symptom Manage. 2015 Mar 28. pii: S0885-3924(15)00154-2


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 不眠は進行がん患者が冒される最も一般的な合併症の1つである。重度の不眠はQOLに非常に悪影響を及ぼす。不眠は疼痛を増悪させ、身体的そして精神的不快感を引き起こす(倦怠感、日中の眠気、そして昼夜逆転)。他の症状と同様、不眠は患者、家族、介護者を苦しめる。さらに、病状が進行するにつれて進行がん患者は経口での薬の服用が困難となってくることが多く、最終的に非経口薬物投与が必要となる。静脈内カテーテル留置は進行がん患者においてはしばしば不快であり、また困難である。こういった患者では単回皮下投与は静脈内投与と比べて容易でありストレスはより少ないものである。
 ベンゾジアゼピンは緩和ケアにおける睡眠の導入目的によく使われる睡眠薬である。
日本ではミダゾラムとフルニトラゼパムを注射用製剤として使うことが出来る。ミダゾラムは短時間作用型、フルニトラゼパムは中間作用型のベンゾジアゼピンである。この8年間、著者らは不眠の治療にミダゾラムとフルニトラゼパムの単回皮下投与法を行い成功してきた。単回投与は、特別な設備を必要とせず単純で在宅医療を受けている患者を含めた患者にも医療機関にとっても有益であるため有効な方法である。しかしながら著者らが知る限り、不眠治療におけるミダゾラムとフルニトラゼパムを単回皮下投与についてはこれまでに報告されていない。
 この後方視的解析はJCHO東京新宿メディカルセンター(以前は東京厚生年金病院)の緩和ケア病棟で行われた。著者らは次に示す適格基準を満たし、2012年1月から2012年12月の期間に入院された患者の電子カルテを再調査した。適格基準は以下を満たしたものである。①進行がんと診断されていて緩和ケア病棟に入院している、②経口での薬の服用が困難、③睡眠不足の訴え、④ベンゾジアゼピンの単回皮下投与について同意している。おおよその全睡眠時間、覚醒の回数、そして夜間の有害事象の発生について緩和ケア病棟の看護師により評価された。研究は東京厚生年金病院の院内倫理委員会に承認を得た。
 研究期間中、著者らの病院の緩和ケア病棟に151名の患
者が入院した。ミダゾラム投与を受けたのは平均年齢が73.3(53~95)である22名の女性と39名の男性で、フルニトラゼパム投与を受けたのは平均年齢が71.3(53~91)である
13名の女性と15名の男性であった。原発部位は、肺(22名)、食道、乳腺、大腸・直腸(5名)、咽頭(4名)、膵臓、胃・十二指腸・、肝臓・胆管、卵巣・子宮、腎臓(3名)、脳、腹膜、腎盂(2名)、脂肪肉腫、副腎(1名)であった。緩和ケア病棟への平均入院期間は35.9日(中間16日)であった。ミダゾラムとフルニトラゼパムの投与は表1に示されている。
img233(文献から引用)
 総計6時間以上睡眠がとれた患者の比率は57%(ミダゾラム)、75%(フルニトラゼパム)であった。3名の患者は皮下投与を行った時に軽度のそして一過性の疼痛を訴えた。転倒または重大な事象は発生しなかった。
 ベンゾジアゼピンは不眠症の治療に最も一般的に使われる睡眠薬であるが、ベンゾジアゼピンはいろいろな副作用を引き起こす。緩和ケアを受けている患者達は寿命が制限されていて、彼らは激しい痛みやその他の問題を抱えている。症状緩和のゴールは副作用の懸念あるいは副作用の心配を無視することかもしれない。以前の報告では進行がん患者を対象とした理想的な催眠薬が不足していることについて議論されていて、適切な薬物は個人それぞれの医療的状況に基づいて個々の患者のために選択されることが必要である。ベンゾジアゼピンの投与期間は非常に短い。ベンゾジアゼピン単回投与による治療は不眠症を改善することを意図としていた。ほとんどの患者は経口で薬物を服用するのが困難であり、予後不良であった。
 著者らは、データーは明らかに試験的で予備的であることを理解している。それにもかかわらず、著者らは総計6時間以上睡眠が取れた患者の頻度が高いことから、ミダゾラムやフルニトラゼパムの単回皮下投与の可能性は不眠を訴える進行がん患者の助けとなる治療法であることを示していると考えている。無作為化プラセボ対照試験を含めたさらなる試験が著者らの結果を確証するために必要だろう。