簡便性がいいことから多用されている貼付薬、薬剤としてはフェンタニル、ブプレノルフィン製剤があります。この論文はフェンタニルとブプレノルフィンの経皮吸収製剤についてまとめたレビューです。

Dosing considerations with transdermal formulations of fentanyl and buprenorphine for the treatment of cancer pain.
J Pain Res. 
2014 Aug 19;7:495-503.


(背景)
 オピオイドは依然として中等度から重度のがん疼痛の主要な薬物療法である。新しくがんと診断された患者の少なくとも33%、そしてその中で転移性疾患の65~85%は疼痛コントロールが十分ではないと相変わらず報告されている。最近は数多くの薬物療法ががん疼痛治療に用いることができる。不運にも、多くは治療量以下の薬物量を経験し、不十分な疼痛コントロールにみまわれている。歩行時に疼痛が悪化することを心配している患者はしばしば毎日の活動に参加することを躊躇する。彼らの行動を控える行為は増加するほどに家族と社会の関係は強く影響を受け、QOLは低下する。
 経皮吸収型オピオイド(TD-Os)(主として経皮吸収型フェンタニル(TD-Fe))は経口的に服薬が出来ない患者に対して使用するために第一に推奨されているにもかかわらず、モルヒネの経口(PO)徐放製剤(SR)が開業医の第一選択薬として考慮されてきたのだが、近年経皮吸収製剤の使用が大いに増加してきた。全てではないとしても多くのがん疼痛のある患者は疾患が進行していくなかで最後はオピオイド治療の変更を必要とするだろう。”opioid switching”という言葉は、患者がおおくの有害事象(AE)を経験することなく十分な疼痛緩和が得られない時に、WHOの疼痛ラダーstepⅢで選択されたオピオイド(中等度から重度の疼痛に対する経口そして
経皮吸収型オピオイド)を他のオピオイドを代用して使用することを実行することを説明するために使われている。このことは経口モルヒネの使用でこれといった副作用のない範囲で安定している患者に経皮的な投与方法に変更することと誤解してはならない。オピオイド代用はまた不完全な交差耐性と呼ばれていてオピオイドの効果を改善することが示唆されてきている。

(治療における
経皮吸収型オピオイドの立場)
 
経皮吸収型オピオイドはWHO疼痛ラダーstepⅢで選択されるものと考えられている。経皮吸収型オピオイドの投与は血漿中のオピオイド濃度をゆっくりと一定のスピードで増加させ、数日より長い半減期、十分な薬理効果が得られるまでには長くかかる。最近のがん疼痛に対する経皮吸収型フェンタニルと経皮吸収型ブプレノルフィン(TD-Bu)の使用に関する最近の利用出来る文献に基づくと、他のオピオイドと比較して経皮吸収製剤間で効能にあきらかな違いは認められなかった。
 経皮吸収型オピオイドは経口モルヒネと比べて便秘と鎮静の頻度は低く、非侵襲的で、患者のアドヒアランスを援助する便利な投与スケジュールを提供する。経皮吸収型ブプレノルフィン経皮吸収型フェンタニルと比べた時、嘔気と有害事象のために治療中断する報告は少ないと論証しているデーターが限定的ではあるが存在するが、これらの結果を確証するための更なる研究が必要である。

経皮吸収型オピオイドへの変更)
 あるオピオイドから他のオピオイドに変更する時は、安全で効果的な転換率を利用することは重要である。投与量の計算間違いにより、用量不足または用量過多、患者の過度の苦痛、治療の失敗、アドヘアランスの消失、そして、または治療中断をきたすことになる。不幸にも患者内の変わりやすさと不完全な交差耐性がオピオイドの一致した鎮痛作用用量に関しての統一したガイドラインが出来ない原因の一因となっている。歴史的には6:1の変換率が疼痛に対する経口モルヒネとモルヒネ静脈内投与を変更するのに用いられてきた。
 
6:1の比率は急速に繰り返すクロスオーバー投与(相対効力分析とも呼ばれる)に由来し、その後がん疼痛に対しては不適切であることがわかった。3:1の比率(経口のモルヒネ対静脈内投与のモルヒネ)はより有効であることが示唆されていて、がん疼痛緩和に最もしばしば利用されている。実用的な鎮痛作用の等力価用量比は2つのオピオイドの効能を比較した無作為化比較試験(RCT)または慢性投与中のオピオイドの代用について述べている観察症例シリーズに由来する。MercadanteとCaraceniによる系統的レビューでは、クロスオーバーデザインされた6つのRCTとopioid switchingにつき考察している26の症例シリーズから重要な洞察について示されている。最も強い根拠は、オピオイド代用が行われる前のオキシコドンとモルヒネ(4RCT)、オキシコドンとハイドロモルフォン(1RCT)、ハイドロモルフォンとモルヒネ(1RCT)の鎮痛効果のある適度な容量で安定している患者から手に入った。
 変更の第1ステップは患者の24時間での経口モルヒネ使用量(mg/日)を計算し、次に経皮吸収型オピオイドの用量を決定するために正確な変更比率を適用することである。経皮吸収型オピオイドによる薬物治療に変更するとき、著明な突出痛とオピオイド退薬症状にみまわれる危険性が高まることになる。オピオイド退薬症状の機会を減らすには、患者は経皮吸収型オピオイドが治療域に達するまで頓服使用(PRN)ではなく定期的なスケジュールで3時間または4時間ごとに速放性(instant release:IR)オピオイドを処方されなければならない。付け加えて、突出痛緩和のための速放性オピオイドの補足的頓服は経皮吸収型オピオイド治療開始からずっと(経皮吸収型フェンタニルは初めの18時間、経皮吸収型ブプレノルフィンは初めの48時間)与えられなければならない。そしてその後は2~3時間毎に頓服を続ける必要がある。経皮吸収型オピオイドの治療用量設定の間、開業医は経皮吸収型オピオイド療法開始後初めの48~72時間の間に突出痛治療に利用されたIRの日の総量を記録するべきであり、臨床的に必要であれば経皮吸収型オピオイド用量の増量を考慮する。その上、経皮吸収型オピオイドは長時間作用し血清濃度が安定した状態に到達するのに5~6日間を要しうる。3日ごとに張り替える経皮吸収型フェンタニルの2回目の貼付の間、そして7日ごとに張り替える経皮吸収型ブプレノルフィンの最初の貼付の間に安定した濃度に到達する。がん疼痛に対する経皮吸収型ブプレノルフィンは週の固定した2日に投薬される(火曜日と土曜日)。

経皮吸収型フェンタニルの変更比)
 Donnerらは経口モルヒネ徐放製剤から経皮吸収型フェンタニルに変更された98名のがん疼痛のある患者について調査した。彼らは2:1用量変更比(経口モルヒネ2mgと経皮吸収型フェンタニル1μg/時は等しい)は100:1の相対的力価を意味し、がん疼痛に対し適切な開始用量を規定することを発見した。経皮吸収型フェンタニル治療の開始は以前に服用している経口モルヒネ徐放製剤の用量に基づいて、それから2:1の経口モルヒネから経皮吸収型フェンタニルへの用量変換比(100:1相対的力価)を用いて経皮吸収型フェンタニルの開始用量が決められる。患者は突出痛を治すために頓用で速放型モルヒネの液体製剤を投与される。経皮吸収型フェンタニルは痛みの強さにおいても、疼痛発作の報告回数も不変でありがん疼痛治療に対してモルヒネ徐放製剤に匹敵することが見出された。しかしながら、経皮吸収型フェンタニルを処方されている患者はモルヒネ徐放製剤を処方されている患者と比較して突出痛に対し頓用の速放経口モルヒネの使用頻度が有意に高かった(p<0.05)。研究者らはこの結果についての理由を明らかには出来なかったが、患者が突出痛に速放性経口オピオイドを使用するに慣れていたか、もしくは72時間の治療期間を越えても効果的に疼痛軽減が得られていなかった患者は、経皮吸収型フェンタニルの48時間の治療でよくなったのかもしれないと仮定した。
 便秘と緩下薬の使用は経皮吸収型フェンタニルによる治療を受けている患者において有意に減少していた(p0.05)。バイタルサイン(呼吸数、血圧、心拍数)、他の有害事象(嘔吐、下痢、めまい、呼吸苦、発汗、掻痒症、ドライマウス、倦怠感)、そして呼吸抑制の報告に関しては臨床的な差は見出されなかった。経皮吸収型フェンタニルに変更後1日以内にモルヒネ退薬症状を経験したと報告した患者が3名認められた。
 ドイツでのがん疼痛に対する経皮吸収型フェンタニルの臨床経験でもまた2:1用量変換比率は安全で効果的だと結論づけられていた。観察研究は疼痛のためオピオイド投与なし(WHO stepⅠ)、コデイン(WHO stepⅡ)、または経口モルヒネ(WHO stepⅢ)から経皮吸収型フェンタニルに変更した1828名の患者で行われた。著者らは経皮吸収型フェンタニルの薬物療法を開始するする時に3:1の変換比率にすると血清レベルが治療域に到達しなかったと報告した。スタディの全ての患者は経皮吸収型フェンタニルによる薬物治療の初めの2日間で2:1比の用量増加が必要であった。全体的に見れば、オピオイド無群と経口モルヒネ群間で副作用の有意差は認めなかった(32% vs 30.1%)。経口コデインから経皮吸収型フェンタニルに変更された患者はこの知見については有意差として報告されていないが副作用の発生頻度が髙かった(45%)。便秘は全ての群間で平均発生率16.6%と報告されている最もありふれた有害事象であった。
 報告された情報を提供するために図1は
経皮吸収型フェンタニルの予測しうる治療アルゴリズムを概説している。
img234(文献から引用)
表1はがん疼痛治療で一般に処方される経口モルヒネとの相対的鎮痛作用力価を比較して示したものである。
img236(文献から引用)
患者は変更する前に現在のオピオイド治療において安定した状態であることが、第一である。
経皮吸収型フェンタニルの開始量を決めたら、開業医は患者の臨床状態を評価し、利用できる強さ(12.5、25、50、75、100μg/時)のなかで、最も近い用量の製剤に用量を調整するべきである。オピオイドを投与されていない患者は経皮吸収型フェンタニル25μg/時以下で開始されるべきである。最も近い用量に到達させるためにパッチ強度を組み合わせることが必要かもしれない。図2は経皮吸収型フェンタニルの用量変換のいくつかの例を提示している。
img235(文献から引用)

(経皮吸収型ブプレノルフィンローテーション)
 ブプレノルフィンはμ受容体部分作用薬で疼痛コントロールでのオピオイド変更をする時に臨床的なマイナスの影響を引き起こすことはない。
経皮吸収型ブプレノルフィンはさまざまな容量強度の製剤(5、10、15、20、35、52.5、70μg/時)が利用可能である。経皮吸収型ブプレノルフィンへ変換する時のデーターで発表されているのはあまりなく、また多彩な変換比率が利用されている。疼痛コントロールが安定しているがん患者で経口モルヒネから経皮吸収型ブプレノルフィンに変換したN of 1試験の報告が2報あり、75:1の相対的鎮痛作用力価の使用を支持している。したがって、経口モルヒネ60mgの用量は経皮吸収型ブプレノルフィン0.8mg/日すなわち35μg/時と等力価である。最初の研究は経皮吸収型ブプレノルフィンに突出痛に速放性経口モルヒネを投与されるのが日に2回以下で6日以上経口モルヒネまたは経皮吸収型ブプレノルフィンの安定した用量を受けていた10名のがん患者が含まれている。疼痛、症状の強さ、そして鎮痛治療の包括的満足度において統計的有意差は観察されなかった。便秘は経皮吸収型ブプレノルフィン変更群で有意に改善されていた。別のN of 1試験では、6名のがん患者において経皮吸収型ブプレノルフィンと経皮吸収型フェンタニルを比較した双方向クロスオーバーの形式で利用された。これらの患者は経皮吸収型ブプレノルフィンまたは経皮吸収型フェンタニルの治療を受けていて少なくとも6日は許容可能な鎮痛と関連する有害事象なく安定した状態であり、日に突出痛に速放性経口モルヒネを投与されるのが日に2回以下の速放性経口モルヒネの突出痛用量を使用していた。変更する間に報告された疼痛、症状の強さにおいては有意差はなかった。著者らは経皮吸収型フェンタニルまたは経皮吸収型ブプレノルフィンによる安定した治療を受けている患者は経皮吸収型フェンタニルには100:1の相対的力価で、経皮吸収型ブプレノルフィンには75:1の相対的力価を用いて安全に代わりとなるTD-Oに変換可能であると結論付けている。
 Aurilioらの研究では、
経皮吸収型フェンタニルから経皮吸収型ブプレノルフィンに変更した16名の患者と経皮吸収型ブプレノルフィンから経皮吸収型フェンタニルに変更した別の16名の患者について調査した。有害事象のために全員その結果として効果的な鎮痛が得られなかった。残念なことに最終的な変換率は変換の方向と患者の選択に基づき多様であった。それ故用量変換に関連した結論はこの研究では結論付けられなかった。
 ドイツの2198名の非がん患者と2544名のがん患者の記録を含んだ患者データーベースの後方視的研究では経口モルヒネから経皮吸収型ブプレノルフィン等力価比率は110:1から115:1であることが示唆された。研究の限界は同じ強さのパッチ1枚以上同時に使用している患者を証明するのが不可能であることである。それ故経口モルヒネと経皮吸収型ブプレノルフィン間の”計算された”等力価用量は保守的であり報告されたものよりおそらく多くなっただろう。
 Freyeらは重度の筋肉痛(24名)、がん疼痛(10名)、又は神経障害性疼痛(8名)で苦しんでいる42名の患者において経皮吸収型ブプレノルフィンにつき検討した。変更は推奨されず、オピオイド変更は開業医の臨床判断で単独で行われていた。研究者らは処方された経皮吸収型ブプレノルフィンの用量に基づくと、低用量経皮吸収型ブプレノルフィンが必要であったことを発見した。この研究の患者の大多数(71%)は経皮吸収型ブプレノルフィン52.5μg/時で十分な緩和が得られた(用量において25%の減量または100:1比)。しかしながら、研究に登録された10名のがん患者では75:1の比率にまたは70μg/時にまで用量が増加することを注意するべきである。以上のことはこの集団は、より積極的な投薬が必要であることを示唆している。
 4名の患者の症例検討ではモルヒネから Freyeらは重度の筋肉痛(24名)、がん疼痛(10名)、又は神経障害性疼痛(8名)で苦しんでいる42名の患者において経皮吸収型ブプレノルフィンにつき検討した。変更は推奨されず、オピオイド変更は開業医の臨床判断で単独で行われていた。研究者らは処方された経皮吸収型ブプレノルフィンに基づくと、低用量経皮吸収型ブプレノルフィンが必要であったことを発見した。この研究の患者の大部分(71%)は経皮吸収型ブプレノルフィン52.5μg/時で十分な緩和が得られた(用量において25%の減量または100:1比)。しかしながら、研究に登録された10名のがん患者では75:1の比率にまたは70μg/時にまで用量が増加することを注意するべきである。以上のことはこの集団より積極的な容量が必要かもしれなことを示唆している。
 4名の症例検討ではモルヒネに対する経皮吸収型ブプレノルフィンの相対的力価をより消極的なものと報告した。研究者らはどの比率を支持するか決めるのは困難であった(要約では110~115:1そして結論では100:1)。研究対象の患者は全て慢性非がん性疼痛が併存していることを注意するのは重要で、がん患者は十分な疼痛緩和を得るためにはより高用量が必要であるとする研究が示されている。経皮吸収型ブプレノルフィンへの変換比率において利用できる根拠は限られているが、これらデーターはここではある程度重要である。初めの症例は、処方されている経皮吸収型ブプレノルフィン17.5μg/時は76:1が等力価比率である(経口モルヒネ32mg/日から経皮吸収型ブプレノルフィン0.42mg/日)。4つ目に報告された症例では、50μg/時の経皮吸収型フェンタニルは100:1の相対的力価を用いて52.5μg/時の経皮吸収型ブプレノルフィンに変更された。100:1の力価はこの患者では有害事象なく疼痛を70%緩和する結果となった。1年以上の間、この患者は適度な疼痛コントロールを報告し、週に約1回突出痛に対し治療を行ったのみである。経皮吸収型ブプレノルフィンに対する治療上の反応における著明な患者間の多様性はおのおのの症例間で報告され、患者は疼痛治療を支持するためにさまざまな鎮痛補助薬または治療(アミトリプチン、ガバペンチン、NSAIDs、カルバマゼピン、鍼治療)をうけている。したがってこれら4つの症例研究で報告されたデーターはとても複雑であり、経皮吸収型ブプレノルフィンへの正確な等力価比率はこれら知見によって特定することはできない。
 利用できるデーターは限られたものであるが、経皮吸収型ブプレノルフィンへ変更するための正確な根拠はこの時点では存在しない。がん疼痛のある患者はより積極的な変換比率が必要かもしれないが、さらなる研究がこの患者集団では必要とされている。

(突出痛と退薬症状)
 突出痛または一過性疼痛は、24時間徐放性オピオイド治療により十分コントロールされた安定した疼痛治療がなされていた状況でおこる疼痛の短時間の悪化として説明されている。一過性疼痛は適切な24時間徐放性オピオイド治療と共に、
フェンタニルバッカル製剤または経鼻製剤ばかりでなく経口速放性オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、ハイドロコドン)の補足的頓服用量で対処される。速放性粘膜吸収型フェンタニルの用量は患者の反応に応じて用量調整し決定されるべきである。経皮吸収型オピオイドの最初の用量で十分に疼痛緩和が得られたかどうかは、薬物療法開始時に評価されるべきであり、投薬開始から最初の3~5日間に渡って続けられるべきである。治療のゴールは患者の生活が日中そして安静時にできるだけ乱されないように突出痛に対する投薬回数を限定することである。
 もしいったん適切に疼痛コントロールが安定した状態に達して、24時間に渡って持続するのに2回以上の投薬が必要であるなら、臨床医は経皮吸収型オピオイドを増量するのを考慮する。
経皮吸収型フェンタニルの用量増加は通常パッチ強度の25~33%増量であり、治療に対する患者の反応に基づいている。経皮吸収型オピオイドの理想的な容量は患者ごとに、疼痛コントロールと突出痛に対する薬物治療の有効性を繰り返し評価することによって決定する。
 退薬症状を最小限にするために、移行期間中は頓服ではなく3~4時間ごとに決めておいた速放性オピオイドを利用することを患者さんに助言するべきである。経皮吸収型フェンタニルの薬物療法開始前に退薬症状予防または速放性経口オピオイドの橋渡し用量は先に使用していた24時間用量の10~15%と同等とするべきである。患者はまた、この最初の期間およびその後のも、もしも突出痛にみまわれたら追加投薬または頓服として約2時間ごとの速放性オピオイドと用いて自己治療が可能である。

経皮吸収型オピオイドパッチの考慮)
 適切な皮膚粘着力は経皮吸収型オピオイドパッチの効能を確実にするのに必須である。まず第一に貼付部位の皮膚の毛は注意深く切り落とされるべきである。皮膚の毛を剃ることは、擦過傷が起こる為に推奨されない。経皮吸収型オピオイドは清潔、乾いた、傷のない皮膚に貼付されるべきである。プラスチックの支持体を取り除き手で30秒以上圧を加えてしっかりと固定すべきである。経皮的治療システムの多施設研究グループによって、経皮吸収型フェンタニルによる治療を受けている患者の大多数(82%)におけるパッチの粘着力に関連した問題は認めなかった。暖かい気候風土の地方や、とても汗をかくような目に遭うような人の場合もまた、パッチは少しの量の粘着テープで固定しても差し支えない。皮下にオピオイドの沈着を最小限にするために、それぞれ経皮吸収型オピオイド変更時に貼付部位をずらせて回転することは推奨される。
 経皮吸収型オピオイドパッチは入浴、シャワー、泳いでいる間温もることがあっても大丈夫だが、患者は温かいお湯や外部の熱源(電気毛布、加熱パッド、サウナ、温水スパ、温泉、日光浴)を避けるべきである。いくらかの経皮吸収型製剤には金属(アルミニウム、2酸化物チタン)が含まれることがわかった。これらの金属はMRI検査または外部除細動器が心蘇生時に使われるときに電流を伝達する可能性がある。MRI検査中経皮吸収型オピオイドパッチを貼付している患者で皮膚の熱傷を来した数例があったことから、安全薬物療法協会やFDAはMRI検査前にパッチを剥がす警告を急いで発行することになった。
 
経皮吸収型オピオイドパッチを用量調整のために決して切ってはならないし、変化したり傷ついた時には決して用いてはいけない。処分するためにパッチを剥がしたら、粘着面が互いにくっつくように半分に折り曲げて、そしてただちにトイレに流すようにする。もう用のなくなった残りのパッチはパッケージから取り出して、そして同じように処分することができる。
 
経皮吸収型フェンタニルの鎮痛効果はがん疼痛のある患者の大多数で3日間持続しそれ故に72時間ごとに張り替えるよう処方する。疼痛コントロールが不良の患者に対しては、経皮吸収型フェンタニルの投与間隔を短くするより投与量を増やすことが推奨されている。しかしながら患者の少数は、投与48~60時間後に痛みのコントロールが悪くなったと感じることがある。それゆえ何度か用量の修正をしてもなお、もしも患者がパッチ貼付後48~72時間の間に突出痛治療を日に4回以上持続的に必要としたら、開業医は48時間間隔投与を考えるだろう。経皮吸収型ブプレノルフィンパッチはよく患者のアドヒアランスを支持するために週の固定した曜日に週に2回変更される。

(副作用と相互作用)
 先に述べたように、
経皮吸収型オピオイドは良好な耐容性が高く受け入れられやすく有害事象が少ないことと関係している。特に経口オピオイド鎮痛薬と比べて便秘(16~22%)、嘔気(2~9%)、そして鎮静(2~11%)である。発疹
(5.6%)、かゆみ(13.6%)、紅班(8.2%)、過敏反応(2.7%)、皮膚炎(0.8%)といった頻度的には少ない貼付部位に関連した皮膚科学的反応が経皮吸収型オピオイドで注目されている。
 Tassinariらによるランダム化比較試験ではモルヒネまたはメサドンを投与されている患者は臨床的に著明な中枢神経系の有害事象を認めるようになるが、一方で経皮吸収型フェンタニルのコホートでは中枢神経系の副作用は認められなかったと説明した。同じグループの研究者らによって指揮されたメタ解析で、彼らは経皮吸収型フェンタニルの使用が経口徐放性モルヒネよりも好まれるだけでなく、がん患者と非がん患者も便秘と尿閉を経験することが有意に少なかったことを見出した。全体の有害事象、全体の胃腸管有害事象、全体の神経学的有害事象、嘔気、嗜眠、低換気、試験からの脱落、そしてオピオイド治療の変更において、経口徐放性オピオイドと経皮吸収型オピオイドの間に有意差は認められなかった。全てのオピオイドは身体依存を引き起こす可能性があり、患者は経皮吸収型オピオイドの薬物療法中止後2日から2週間は興奮、不安、不眠症、多動、振戦、そして胃腸管系の問題について監視されるべきである。健常人ボランティアにおいて、ブプレノルフィンは呼吸抑制に関して”天井効果”を示すが、鎮痛効果に関しては示さない。臨床的に重要な呼吸抑制は中枢神経系抑制剤を併用している患者で経皮吸収型ブプレノルフィンを用いた時に認めることがある。最後の経皮吸収型ブプレノルフィンを剥がすと、血中濃度は徐々に低下していく。これはオピオイド受容体からの非常に緩徐な分離によるもので、それによって、パッチ中止による禁断症状を起こす危険性を低く抑えることができる。
 
経皮吸収型オピオイドは肝臓のCYP450酵素系により処理され、CYP3A酵素に影響することが知られている薬剤(表2)は経皮吸収型オピオイドと相互作用する。
img237(文献から引用)
FDAの黒枠警告は
経皮吸収型フェンタニルとCYP34A阻害薬の併用を禁止している。CYP3A5がオピオイドを代謝できることは充分には評価されていないが、CYP3A5多様性をもつ患者についても考慮が必要である。中枢神経系の抑制を引き起こすことが知られている物質または薬物(アルコール、ベンゾジアゼピン、骨格筋弛緩を起こす薬物)と経皮吸収型オピオイドと併用すると死亡することがある。
 全てのオピオイド治療薬と同様に、経皮吸収型オピオイドは過量投与のリスクと死亡の可能性がある。経皮吸収型オピオイドの使用が増加していて、経皮吸収型オピオイドに関連した死亡例も増加している。死亡のリスクを減らすために、FDAは過去9年間いくつかの安全性警告を勧告していた。2013年9月、FDAは子ども、ペット、その他において重大な害や死を引き起こすことがある事故暴露を避けるための努力としてすべてのフェンタニルパッチ製剤の色を変更することを示した安全コミュニケーションを出した。1997年から2012年にかけて26名の幼児が事故による過量投与を受けた。結果、これらの幼児の10名が死亡した。FDAは経皮吸収型フェンタニルの治療ガイドや使用説明書に加えて経皮吸収型フェンタニル安全使用戦略によって市民の認識を高めることを継続している。しかしながら、医療従事者は経皮吸収型オピオイドの処方箋を記載する時はその都度患者と介護者に適切な保管と処理についての情報を提供することは非常に重要である。

(特定年齢層)
 
経皮吸収型オピオイドは悪液質のある患者そして/または肝機能障害のある患者では注意深く使われるべきである。限定的な研究では、結果として脂肪組織の貯蔵が減少した悪液質の患者では皮膚を介して同じようには吸収されない。悪液質の患者は見た目には高用量の経皮吸収型オピオイドが使われている時でさえ不適切な鎮痛になる危険があるかもしれないのと同様に注意深くモニタリングされるべきである。要介護老人はしばしばいくつもの処方薬を服用していて、何種類もの治療関連そして疾患関連の相互作用の危険性増加させるいくつかの併存症を併せ持っている。それによって、自分の治療関連および疾患関連の相互作用の危険性が更に増すこととなる。高齢者は一般的に薬物感度の増加、薬物反応の低下、そして有害な副反応を被るようになる。高齢者では経口徐放性オピオイドと経皮吸収型オピオイドは好んで使用されており、注意深くモニタリングして用量設定をされなければならない。腎機能障害を合併した高齢者において経皮吸収型オピオイドの用量調整は必要ない。しかしながらオピオイドは肝臓で代謝を受けるので、肝機能障害のある高齢者では注意深くモニタリングされるべきである。小児での経皮吸収型オピオイド使用についての限定的ではあるがデーターが存在する。これらの治療は子供におけるがん疼痛の治療に好都合な選択であるが、研究は今のところ一般に普及した使用を支持するのに十分ではない。

(結論と推奨)
 オピオイド治療はがん疼痛で苦しんでいる人にとって第一選択の薬物療法である。すべてのがん疼痛患者ではないとしても多くが、最期には経皮吸収製剤を含めたいずれかのオピオイドを選択することになる。適切に変更し移行する時期の間モニタリングをすることは重要である。治療量以下の投与そして退薬の危険を減らすために、
すべてのがん患者は経皮吸収型オピオイドの個々に応じた投与が必要である。経皮吸収型フェンタニルと経皮吸収型ブプレノルフィン製剤はがん疼痛治療において安全で効果的な治療オプションを提供する。がん患者には経皮吸収型フェンタニルの投与が100:1の鎮痛作用としての等力価比率を用いたより積極的な投与が必要とされている。経皮吸収型ブプレノルフィンには著明な患者間変動があり、等力価比率は75:1~110:1が推奨されている。がん患者は疼痛コントロールのために高用量の経皮吸収型ブプレノルフィンが必要であることがあり、75~100:1の用量比がよりよく反応する。患者は副作用が少なくかつ簡便性からも経皮吸収型オピオイドを好んでいて中等度から重度のがん疼痛に対するWHOのstepⅢ選択薬であるこれら経皮吸収型オピオイドが有益なものとなっている