オクトレオチド(商品名:サンドスタチン)は腸管閉塞における腸管分泌液抑制のために投与されています。悪性腸管閉塞の標準療法(ステロイド、ラニチジン)にオクトレオチドを併用した場合の嘔吐の頻度について検討されています。

Double-Blind, Placebo-Controlled, Randomized Trial of Octreotide in Malignant Bowel Obstruction.
J  Pain Symptom Manage. 
2015 May;49(5):814-21.


(背景)
 がんを患っている人の3%~15%の人は いつかは腸管閉塞を経験する。進行した病期で、外科的治療や抗がん治療が施行され尽くされた状態である時は悪性腸管閉塞と診断された後の生存期間は4、5週間である。患者の全身状態が不良で抗がん治療が選択肢とはならない時、最小限の侵襲度の外科治療でさえ悪性腸管閉塞を合併した患者にとって転帰を改善させることはない。外科治療後の30日生存に対する予後不良因子には、がん性腹膜炎、腹水、小腸の完全閉塞、低アルブミン血症そして白血球増加がある。持続的経鼻胃管による吸引や静脈内輸液といった治療は、
急性期治療で行われていて時に適切だが、初期評価では行われるが長期間選択されることは稀である。
  悪性腸管閉塞は嘔吐、腹部膨満、疝痛または持続的腹痛を引き起こすことになる症状は幾らかは閉塞の程度に依存している。手術不能悪性腸管閉塞の治療は症状を和らげることを目的としている。つまり嘔吐は腸管分泌物を減少させることにより頻度と量を減らし、疼痛は持続性疼痛にはオピオイド、疝痛には鎮痙薬を投与する。
 手術不能悪性腸管閉塞を合併している人を治療するための
標準的臨床アプローチもなければ、決まった薬物治療もない。2つのコクランレビューでは外科手技を知らせる助けになるような性質のスタディは見つけることが出来なかった。1つのコクランレビューでは閉塞の解除にプラセボよりデキサメサゾンを支持する傾向を示唆している。より最近のデーターでは、ステロイドは独自にオクトレオチドによる治療を受けている人の転帰を改善する可能性を示唆している。1つのメタ解析で、上部消化管からの分泌量を減量させる点においてプロトンポンプ阻害薬を含めた他の薬剤よりラニチジンの優位性について論証している。それゆえこれら2つの治療法は標準治療として両群に含められている。
 ソマトスタチンは上部消化管においてホルモンとして、傍分泌因子として、そして神経伝達物質としても働く複雑な作用をもつ物質である。オクトレオチドはソマトスタチンアナログであるが、悪性腸管閉塞の症状を軽減させる理論上の能力をもつ。
 直接的な選択肢としての局所または全身性の疾患修飾治療法がない
悪性腸管閉塞の臨床場面において、5つのコントロール試験が今現在報告されている。その試験には、ランレオチド(n=80)または初めの6日間はオクトレオチドとランレオチド併用した2つの大規模試験が含まれている。これらの試験からの知見ではソマトスタチンアナログの使用については支持する結果は得られなかった、一方でオクトレオチド300μg/日の3つの試験(n=15、17、68)では有益性を示唆していると思われる。より最近の非盲検単群自由試験では、婦人科そして泌尿器科がんにおける症状ある腸管閉塞に対するオクトレオチドの圧倒的な有益性について示唆していると思われる。こういった試験で用いられるべき標準治療、オクトレオチドの量、または主要エンドポイントに対する単一化したアプローチは存在しない。しかしながら、以前の試験はこの現在の実際の試験のデザインと分析を知らせる手助けをしている。

(目的)
 標準化された治療にオクトレオチドまたはプラセボを加えた時にがんまたはがん治療により生じた嘔吐と手術不能腸管閉塞を来している患者群での嘔吐のない日数への正味の影響について評価することである。

(方法)
 12の緩和ケア施設が腸管閉塞による嘔吐を来している進行がん患者を登録した。その部門では外科治療または抗がん治療が適応とならない患者を対象にしていた。2重盲検試験では、参加者はプラセボ群またはオクトレオチド群(
600μg/24時間点滴投与)に無作為化した。両群ともに標準支持療法は受けていた(ラニチジン(200mg/24時間)、デキサメサゾン(8mg/24時間)、経静脈的輸液(10~20mL/kg/24時間)。主要な転帰は72時間での患者が報告した嘔吐しない日である。
img238(文献から引用)

(結果)
 CONSORT参加者フローチャートは図1に概説されている。
img240(文献から引用)
スタディは予定されたコホートに補充される。
img241(文献から引用)
腎不全にて用量調整を要した患者はいなかった。64名の患者は先進の同意書を提供した。64名中21名は無作為化された。治療が非盲検であった参加者は一人もいなかった。6名の参加者は重大なプロトコール違反でスタディから除外した。
(主要転帰)
 著者らは1日、2日、3日でのプラセボ群50名、46名、42名、オクトレオチド群49名、47名、45名のデーターを記録した(図1)。主要転帰では、1)
両群間で嘔吐したかった日数(P=0.71、図2)、2)72時間の全ての期間で嘔吐しなかった参加者の総計(オクトレオチド17名、プラセボ14名;P=0.67)、そして群間での嘔吐しなかった日数の平均値(SD)(オクトレオチド:1.87[1.10]、プラセボ:1.69[1.15];P=0.47)において統計的な優位差は見られなかった。Grade3または4の毒性は認められなかった。
img242(文献から引用)
(副次転帰)
 両群間でベースラインと1日目間での嘔吐のエピソードの未調整数の平均は有意に低下していることが示された(図3)。
img243(文献から引用)
スタディの全期間での嘔吐の発生率に対する調整された多変量回帰分析では、プラセボ群と比較してオクトレオチド群で嘔吐のエピソードの数が減少していることが示されていた(IRR; incidence rate ratio=0.40; 95%CI; 0.19-0.86; P
=0.019)。72時間で、42名中31名(74%、オクトレオチド)そして37名中31名(84%、プラセボ)はGIC>0(GIC; Grobal Impression of Change、-3が非常に悪い、+3が非常によい)と評価した。両群とも見通しとしては日ごとに良くなると報告されるだろう(OR=1.8; 95%CI; 1.39-2.36; P<0.001)が、両群間では違いは認められなかった(P>0.75)。嘔気の存在(P=0.37)も嘔気の強度(numerical rating scale; P>0.36)もいずれの日にも両群間で違いは認められなかった。両群の疼痛スコアのベースラインの平均はBPI; Brief Pain Inventryで5.7であり、どの日にも両群間で違いは認められなかった。両群ともに、毎日の疼痛スコアで若干の減少がみられた(約0.25ポイント)。両群間の最後の国勢調査日での生存に差は認められなかった(HR=1.24; 95%CI; 0.81-1.92; P=0.33
 プラセボと比較してオクトレオチド群の患者は毎日の臭化ブチルヒオスシンの投与が2倍くらいになったようだった
P=0.004。スタディの終了時までには、両群間のオッズ比は3.24まで上昇した(95%CI; 1.06-9.96; P=0.041)。スタディの終了時、臭化ブチルヒオスシンの参加者一人当たりの投与量は0.51(オクトレオチド)0.17(プラセボ)であった。
 臨床人口統計学の要素でがんによる腸管閉塞が原因で生じる嘔吐、またはがんの治療に伴う嘔吐治療におけるオクトレオチドに対して、より臨床効果のあるような患者群の特徴を特定することは出来なかった。
(治療の失敗)
 無作為化した後、19名の参加者はスタディを完了することができなかった。内訳は7名は薬剤投与前に(オクトレオチド3、プラセボ4)、そして12名は薬剤開始後(オクトレオチド4、プラセボ8)。退薬症状は毒性の結果ではなかった。参加者で手術または胃瘻増設術を受けた者は認められなかった。3名の患者は経鼻胃管が必要であった(オクトレオチド2名、プラセボ1名)。

(結論)
 嘔吐がない日数の減少は認められなかったが、多変量解析の結果は、この状況下でのソマトスタチンアナログの更なるスタディが保証されることを示唆している。