緩和ケアをうけている患者の今後の予後について可能な限り正確に評価することは、患者本人、家族を含めた介護者にとって重要と思われます。この論文は2011年に発表された新しい予後予測モデルであるPrognosis Palliative Care Studyを利用でき易く著者らが改訂しその有用性について評価した論文です。

Independent Validation of the Modified Prognosis Palliative Care Study Predictor Model in Three Palliative Care Settings.
J Pain Symptom Manage.  
2015 May;49(5):853-60.


(背景)
 緩和領域での正確な予後に関する情報は患者が意思決定するのにそしてゴールと優先すべきものを設けるのに必要とされている。緩和ケア臨床医は、終末期ケアを含めた医療従事者にとっての共通言語を用いて、出来る限り最も正確な情報を患者とその家族に提供するために
注意深く予後判定をするべきである。
 生存期間の臨床的予測(CPS)は一般的に臨床診療での予後について明確に述べるのに有用であるが、
CPS単独では正確さにおいては限定的で過大評価の傾向が生じる。それゆえ全身状態(PS)、がん食欲不振悪液質症候群兆候、呼吸困難、そしてせん妄といった予後因子は進行がん患者においての予後判定に推奨されていて、多くの予後スコアは臨床医に予後についてより正確な情報を提供するために進歩してきた。
 よく用いられる予後スコアは緩和予後(Palliative Prognostic; PaP)スコアと緩和予後インデックス(Palliative Prognostic Index; PPI)で、両者とも1999年に発表されたもので緩和ケア領域の患者にうまくあてはまることが確認されている。最近、Gwilliamらは新しい予後指標であるPrognosis Palliative care Study(PiPS)予測モデルを開発した。PiPSは英国で病院内支持チーム、ホスピス病棟、デイホーム、英国の18緩和ケアサービスを含めた地域緩和ケアチームの間で互いに指揮をとって開発された。予測モデルは患者の予期される予後が日単位(0~13日)、週単位(14~55日)、または月単位(55日以上)なのか見極めることが可能であった。
PiPSにはPiPS-AとPiPS-Bという名の2つの異なった予後モデルが含まれていた。血液検査の結果はPiPS-Bを評価するのに必要であるが、PiPS-Aは血液検査なしで評価することが可能である。PiPSスコアはPiPS計器(http://www.pips.sgul.ac.uk/)のために特別にデザインされたコンピューターベースのインターフェースによって評価されていた。しかしながらこの予後スコアは他の研究チームによってこれまでのところまだ十分には有用性が確認されておらず、そのうえPiPSには患者の協力が必要な1つの検査、Abbreviated Mental Testが含まれていて、そのため日常診療で施用するには制限される。この検査を削除したPiPSモデルの改訂版は実用的となるためいっそう受け入れられるであろう。

(目的)
 このスタディの主要目的は改訂版
PiPSの正確さを試験し、3つの緩和ケア領域、緩和ケア病棟、院内緩和ケアチーム、そして在宅緩和ケアサービスでの有効性を確かめることである(患者インタビューの代りに精神状態を医師が代理して評価する方法を用いて)。

(方法)
 この多施設前方視コホートスタディは2012年9月から2014年4月までの期間、16の緩和ケア病棟、19の院内緩和ケアチーム、23の
在宅緩和ケアサービスを含む58の日本の緩和ケアサービスで行われた。

(結果)
 総計2426名の患者がこのスタディのために募られた。964名は院内緩和ケアチームから、904名は緩和ケア病棟から、そして558名は在宅緩和ケアサービスからである。それらの中で63名の患者はフォローアップできなくなったのと死亡日のデーターを見落としたため除外された。残った2363名の患者でそれぞれの予後スコアの評価に必要な変数を見落としたため、
PiPS-AとPiPS-Bそれぞれ151名と1106名がさらに除外された。したがって著者らは最終的に改訂版PiPS-Aと改訂版PiPS-Bに対しそれぞれ2212名(94%)、1257名(53%)の患者を得た。
 スタディの患者の特性と検査結果はそれぞれ表1、表2に要約されている。
img244(文献から引用)
img245(文献から引用)
院内緩和ケアチーム、緩和ケア病棟、在宅緩和ケアサービスの患者の平均年齢はそれぞれ65.5、70.4、73.0歳であった。すべての領域で消化器官が最も頻度の多い原発部位で、次いで呼吸器/胸腔内がんが多く認められた。院内緩和ケアチームからの患者で39.4%と9.9%がそれぞれ抗がん化学療法そしてまたは放射線治療を受けていた。
院内緩和ケアチーム、緩和ケア病棟、在宅緩和ケアサービスの患者の中間生存期間はそれぞれ45日、24日、37日であった。
 すべての緩和ケア領域において改訂版PiPS-Aと改訂版PiPS-Bは両者とも3つのリスクグループを同定した(図1)。
img246(文献から引用)
3グループのカプランマイヤー生存曲線はグループ間で異なった生存率を示唆していた(P<0.001)。表3は時間に応じた推定中間生存期間を示している。院内緩和ケアチームの患者に対する
PiPS-Aにより分類された3つのグループの中間生存期間の値と相対的95%信頼区間は、日のグループで10日(95% CI: 8~12日)、週のグループで39日(95% CI: 34~44日)、月のグループで134日(95% CI: 108~160日)であった。
img247(文献から引用)
完全な一致率は緩和ケア病棟、院内緩和ケアチーム、在宅緩和ケアサービスにおいて
PiPS-Aモデルでは56~60%まで、PiPS-Bモデルでは60~62%まで変動した(表4)。3つのグループにおいて加重κ値はPiPS-Aモデルで0.39~0.48、PiPS-Bモデルでは0.48~0.51の範囲で変動した(表4)
img248(文献から引用)

(結論)
 改訂版
PiPSは緩和ケア病棟、院内緩和ケアチーム、在宅緩和ケアサービスにおいてうまくあてはまることが確認され、有用である可能性がある。