新しい予後予測ツール、Prognosis in Palliative care studyの論文です。

Development of Prognosis in Palliative care Study(PiPS) predictor model to improve prognostication in advanced cancer: prospective cohort study.
BMJ  2011 
Aug 25;343:d4920.


(背景)
  進行がん患者と彼らの介護者はしばしば患者は後どのくらい生きられるのか知りたいとよく考える。正確な予後を知ることにより、患者はその差し迫った死を迎えるために備える適切な時間を持つことが出来るだろう。質の高いスタディでは、緩和ケアを受けている患者は誠実で、かつ正確な予後に関する情報が欲しいと願っているが、この情報は繊細に共有されなければならないし、患者の希望を持ち続けたい望みを尊重したやり方である必要があることを示す質の高いスタディがある。
 予後に関する情報は臨床医にとってもまた重要である。 現実的な予後推定によって適切な医学的介入の決定そして緩和ケア専門医への紹介またはホスピス病棟への入院の時期についての決定について知ることが出来る。臨床医の予測はGold Standards Frameworkといったプログラムに参加するのに適している患者の優先順位をつけるために、そしてどの患者が 地域ケアに紹介するための”迅速な追跡”配置の準備に適しているかを決定するために、そして臨床試験に適格かを決定するために日常的に用いられている。
 臨床医による生存期間の予測は不正確で過度に楽観的である。そのうえ、彼らの推定は訓練、経験、勤務年数、そして患者との面識の程度といった要素に影響される。これらの理由のため、臨床医による予測は非常に頼りになるものでなければ生存期間予測の強力な方法ではない。それにもかかわらず臨床医による予測は広く用いられていて、そして「私はあとどれくらい?」という質問に対して、より標準化された回答を見つける試みがこれが少なくともより信頼性のあるアプローチであることを示すことが出来るだろう。
 以前のスタディでは進行がん患者における生存期間を予測するいくつかの臨床的もしくは検査の変数を証明している。予後ツールはこれらの変数を組み合わせて点数化するスコアリングシステムを用いて作成されてきた。これらのツールには臨床医の主観的な予想が含まれているものもある。中には臨床的変数を観察者らの評価に依存するだけで、検査データーを含めることの付加価値を考慮していないものもある。ツールの中には検査データーを含むがその結果としてこういったデーターが利用できる時のみ適応されるのもある。ツールの中には満足できる患者だけを用いて開発されたものもあれば、他方では他のツールのスケールの開発の過程で混同した患者が含まれているものもある。現存するツールの1つの重要な批判として、ツールを用いることは臨床医の生存期間予測に対する基準となっておらず臨床診療でのこれらツールの有用性の判断を困難にしているということがある。
 著者らは臨床診療で容易に適応できる予後ツールを開発しようとした。進行がん患者は壊れやすかったり、傷つきやすかったり、あるいは途方に暮れている。多くの患者はさらなる処置を受けるのを好まない(血液検査でさえ)。実用的な予後ツールを開発するために、著者らは適格患者や非適格患者の両者において使えて、そして検査データーが得られるかどうかに関わらず各種の要素からなるスコアリングシステムを作成することを目指した。著者らは緩和ケア領域の種類に関わらず(ホスピス、病院、地域)で適応できるスコアリングシステムの開発を望んでいた。さらに著者らは臨床医の生存期間の見積もりに頼るのではなく、しかし少なくとも彼らの最大限の予後予測と同等に正確なスケールを作ろうと考えた。

(目的)
 臨床医の生存期間の予想よりも優れた進行がん患者で用いる新しい予後指標を開発することである。

(方法)
 前方視的多施設観察コホート研究

(結果)
 スタディの期間中、18の参加緩和ケアサービス施設から7017もの適合する患者が次々と確認された。リサーチチームは適格患者のうちたった2401名の患者しか接触ができなかった(図1)。
img249(文献から引用)
患者との接触に失敗した最も一般的な理由はリサーチチームが接触する前に退院したか死亡したかであった。臨床チームはリサーチスタディに巻き込まれると、患者もその介護者も酷く負担を強いられることになると判断しリサーチメンバーが適合患者に接触することを1102回も拒否した
。リサーチチームによりアプローチされた2401名の患者・介護者のうち1023名(43%)はスタディに参加することを同意した(適格者780名、非適格者243名)。募集された患者と募集されていない適格患者との間に、年齢、性別、疾病分布に有意差は存在しなかった。5名の患者がデーターセットから除外された。1名はその後に新たな原発部位のがんが診断され適格基準を満たさなくなった、2名は脱落、2名は2度登録したミスであった。したがって最終サンプルは1018名の参加者で構成された。表1と2はスタディサンプルの特性を示している。中間生存期間は34日であった。
img251(文献から引用)
img252(文献から引用)
img253(文献から引用)
・PiPS-AとPiPS-Bモデルの開発
 著者らは全ての参加者(適格者と非適格者の両者)から収集した中心的データーセットを用いることにより
PiPS-Aモデルを開発した。著者らは2週間(14日)以上(PiPS-A14)の生存を予測する、そして2か月(56日)以上(PiPS-A56)の生存を予測する別々のモデルを開発した。著者らは血液検査結果も同時に得られた参加者のみから得られたデーターを用いることによてPiPS-Bモデルを開発した。さらに著者らは2週(PiPS-B14)と2か月(PiPS-B56)の生存を予測するための別々のモデルを開発した。表3と4は後方段階のロジスティック回帰の結果が示されている。
・モデルのパフォーマンスとクロス検証
 4つのモデルの曲線下の面積は全て0.79を超えていて(表3と4)、そのことは良好な識別能があることを示唆している。ロジスティック回帰分析モデルは明記されたカットオフポイントでの生存の推定を提供している。
img254(文献から引用)
img255(文献から引用)
しかしながら臨床医は患者が例えば2週間以上生存するかどうかについては大抵は興味を持っていない(
PiPS-A14から提供された情報。この理由として、臨床上の問題はしばしば患者は日の単位、週の単位、月の単位で生存が予想されるといった言葉で述べられることがあげられる。この問題を検討するために、著者らは患者が2週間以上2か月未満生存するかどうか予測するためにPiPS-A14とPiPS-A56モデル(そしてPiPS-B14とPiPS-B56モデル)を組み合わせた。著者らはそれからこれら予測値と多種専門家の生存予想と比較した(表5と6)。臨床上有用な要求の多い基準を用いると、PiPS-Aモデルは少なくとも臨床医と同等である(PiPS-Aの予測は機会の59.6%で正しく多種専門職は57.5%が正しい)。PiPS-Bモデルは医師の予想(61.5% vs 52.6% P=0.0135)、または看護師の予想(61.5% vs 52.3% P=0.012)より著明に優れていたが、多種専門職より著明にすぐれているわけではなかった(61.5% vs 53.7% P=0.188)。
img256(文献から引用)
img257(文献から引用)
 PiPS-Aモデルを用いると、日の単位の生存が予測される患者の中間生存期間は5日、週の単位の生存が予測される患者の中間生存期間は33日、月の単位の生存が予測される患者の中間生存期間は92日であった(図2)。
img250(文献から引用)
PiPS-Bモデルでは、同様に中間生存期間は7日、32日、100.5日であった(図3)。
img258(文献から引用)

(結論)
 もはや治療がなされていない進行がん患者において、臨床的変数と検査データー変数を組み合わせることにより2週と2か月の生存を信頼して予測が出来るかもしれない。