重度がん疼痛に対するタペンタドールの有効性ばかりでなく耐容性、QOLへの影響について検討した論文です。

Tapentadol prolonged release for severe chronic cancer-related pain: effectiveness, tolerability, and influence on quality of life of the patients.
J Pain Res. 
2014 Dec 22;8:1-8. 


(背景)
 がん患者において 、疼痛は明らかに日常の活動やQOLの障害の一因になっている重大な問題である。軽度の疼痛でさえ患者に日常生活に大きく抵触する。オピオイドは慢性がん疼痛の治療に重要な役割を担っている。オピオイドの副作用の概略(胃腸管障害や中枢神経系障害)のために不十分なコンプライアンス、治療の脱落を来す。中枢に作用する鎮痛薬であるタペンタドールの持効性放出(prolonged release: PR)製剤は、オピオイド鎮痛薬により十分に管理がされている重度の疼痛を認める成人患者の治療として適応されている。これまでのオピオイドと比較しタペンタドールには1つの分子内に2つの採用機序を兼ね備えている、つまりμ受容体への結合とノルアドレナリン再取り込阻害である。両者の機序によりタペンタドールPRの鎮痛効果が相乗的に寄与することが示唆され、同時に嘔気、嘔吐、そして胃腸管運動の抑制といった典型的な副作用は減少する。重度慢性非がん性疼痛の治療におけるタペンタドールPRの有効性と良好な耐容性はすでに臨床試験や日常の臨床場面ですでに証明されている。がん疼痛の治療での結果も発表されている。臨床試験では、タペンタドールPRの鎮痛効果はオキシコドン徐放製剤またはモルヒネ徐放製剤と同等であることが示唆された、そして胃腸管の忍容性がより有利であることが証明されている。がん疼痛の著明な軽減はまた、日常臨床場面での3か月間で報告されている。疼痛コントロールは別として、特にがん進行病期でのQOLの回復と維持は考慮される必要がある。したがってこの研究は、重度の慢性がん疼痛を認める患者でのタペンタドールPRの日常投与している期間での疼痛パラメーターの変化ばかりでなく日常生活やがんに関連した
QOLの障害を考慮した標準化した自己評価質問票を含めて文書化している。

(患者と方法)
 3か月の観察期間中、45名の医師(主に緩和ケア専門医)は前方視非介入試験と関連して、慢性がん疼痛を認める123名の患者のタペンタドールの投与量と耐容性、これまでの治療内容と付随する鎮痛治療、疼痛強度、疼痛に関連した日常生活とQOLの制限、全身状態を記録した。

(結果)
 表1は123名の患者の人口統計学的そして臨床的特性について記録したものである。60%近くが60歳以上であった(59.4%)。最も多いがんの原発部位は乳腺(26.8%)そして男性生殖器(19.5%)であった。大部分の腫瘍は固形がん(83.7%)で、その32.5%はT3/T4で、50.4%で所属リンパ節の拡がりはN1/N2で、55.3%は遠隔転移(M1)を認めていた。
img266(文献から引用)
患者の65%は腫瘍のため手術を受け、68.3%は抗がん化学療法を43.9%は放射線療法を受けた。併存症は69.1%と報告された。高血圧症は最も多く記録された(44.7%)。患者の機能する能力(ability to function)は様々な程度に減じられていた。ベースラインの平均Karnofsky statusは62.7±17.2で3分の1はかなりの援助としばしば医療を必要とした。合計13.8%は限られたセルフケアが出来るのみであった(ECOG PS3)。患者は主に外来医療を受けていた(87%)。9.8%は専門化された外来緩和ケアを受けていた。
 大部分の患者は持続的疼痛を自覚していて、35.8%は突出痛を経験していた。ほとんどの患者の疼痛は少なくとも1年間持続した。22.8%の患者は5年以上と記録されていた。合計74%の患者は混合性疼痛に苦しんでおり、7.3%は侵害受容性疼痛が有意で9.8%は神経障害性疼痛が有意であった。根底にある疼痛の病因の主なものは腫瘍(50.4%)、そしてがん治療の有害事象(16.3%)である。合計51.2%の患者はタペンタドールPRの治療開始前の6ヵ月間に疼痛のために入院加療されていた。
 評価のベースラインにおいて、全ての患者は主に数種類より成る鎮痛治療をすでに受けていた。即ち42.3%はWHOのステップ3のオピオイドを、39%は
WHOのステップ2のオピオイドを、78.9%は非オピオイド鎮痛薬を投与されていた。突出痛治療(20.3%)同様、抗うつ薬(26.8%)、抗痙攣薬(18.7%)、筋弛緩薬(14.6%)、緩下薬(22.8%)、制吐薬(16.3%)の使用が記録されていた。患者による健康状態の評価(EQ-5D-3L)は、可動性(73.9%)、セルフケア(62.6%)、毎日の活動性(92.7%)、疼痛・不快感(100%)、そして不安・抑うつ(87%)における疼痛の関連した著しい制限を示唆し、QOLの著明な障害(75.3%)に関連していた。
・タペンタドールPR治療
 タペンタドールPRへの変更の最もありふれた理由は、不十分な鎮痛有効性(85.4%)、と不十分なQOL(58.5%)であった。大部分の患者(69.1%)は
タペンタドールPR50mgを日に2回による治療で開始した。22.8%はタペンタドールPR100mgを日に2回、そして8.1%は少なくともタペンタドールPR150mgを日に2回服用していた。平均投与量は治療開始時141.8±75.6mg、フォローアップ時267.0±126.6mg、3か月観察期間終了時286.7±139.8mgであった。中間治療期間は85日であった。3分の2の患者はタペンタドールにより治療を継続した。治療中断の主な理由は根底にある疾患が進行性であるため死亡(9.8%)が第一で、次いで不十分な疼痛緩和(7.3%)、副作用(2.4%)であった。
 タペンタドールPRにより治療開始時、10.6%の患者は強オピオイドを追加的に長期間投与されていて、7.3%の患者は弱オピオイドを、47.2%の患者は非オピオイド鎮痛薬を投与されていた。観察期間終了時、13%の患者は強オピオイドを追加的に投与され、2.4%の患者は弱オピオイドを、47.2%の患者は非オピオイド鎮痛薬を投与された。治療開始時と観察期間終了時の両方で、29.3%の患者は必要に応じて追加的に鎮痛薬を服用すると報告した。
・疼痛軽減
 ベースラインでの平均疼痛強度はNRS 
6.1±1.7であった。84.6%の患者はNRS 5以上であった。各個人の平均治療目標は平均疼痛強度として2.8±1.6と規定されていた。3つの疼痛強度全てにおいてタペンタドールPR治療により著明に減少した(図1)。
img267(文献から引用)
軽度疼痛強度で-2.1(95% CI -2.6~-1.7)、平均疼痛強度で
-2.4(95% CI -2.8~-2.0)、重度疼痛強度で-2.9(95% CI -3.3~-2.4)であった。半数の患者(52%)は観察期間終了時には疼痛スコアが3以下を達成し、41.5%の患者は個人治療目標を達成し、33.3%の患者はベースラインと比較し疼痛強度において50%以上の減少を達成した(表2)。
img268(文献から引用)
わずかな患者にしか突出痛は認められなかった(ベースラインで27.6% vs 35.8%)、そして疼痛エピソードの平均回数は1週間単位で
22.2±15.5から10.4±12.3に減少した。
・不安と抑うつ
 不安・抑うつについての情報はEQ-5D-3LとHADSの2つの質問票を用いて得られた。タペンタドール治療3か月後、疼痛に関連した不安または抑うつを経験している患者の割合はベースラインの87%から62.6%に減少した(
EQ-5D-3L)。ベースライン(31.7%)と比較して、たった8.1%が極度の不安または抑うつを認めるのみであった。HADS質問票による解析においても不安と抑うつは減少した(表3)。
img269(文献から引用)
又希死念慮についても患者に質問した。この質問に回答した36名の患者の9名(25%)は時々またはしばしば自殺について考えると報告した観察期間終了時、割合は8.3%に減少した。
・疼痛に関連した日常生活の障害とQOLの評価
 観察期間終了時、毎日の活動と睡眠における疼痛関連の制限は著明な減少が認められた(図2)。全体的にみれば、平均改訂疼痛障害指数の総計スコアは
45.6±14.0から30.4±20.4に改善し、ひどく影響を受ける患者の割合(スコア43以上)は54.5%から32.5%に減少した。EQ-5D-3Lの程度における障害のない患者の数はまた増加した。移動性において26%から43.1%、セルフケアにおいて36.6から%50.4%、 疼痛・不快感において0%から10.6%、そして毎日の活動性において7.3%から27.6%に改善した。EQ-5D-3Lの全体評価はベースラインと比較して平均1.5ポイントの著明な改善(95% CI -1.9~-1.1)を示唆した、そして患者の全身健康状態は63.5±14.9から45.9±23.9に著明に改善した。
 QOLの疼痛関連障害もまた著明に減少した。全体のQOLの障害はベースラインの7.0±2.3から4.2±2.9に改善した(図2)。
img270(文献から引用)
全体のQOLの障害は特に著明な改善を示した重度の障害(スコア7以上)のある患者の割合は47.9%から12.5%に減少した。さらにQLIP(Quality of Life Impairment by Pain)目録での評価(0:完全障害、40:障害なし、20以下で重度障害)では、異常スコア(総計スコア20以下)の患者の割合が75.3%から61%に改善するのが示され、そしてSF-12の身体的および精神的構成要素スコアは観察期間終了時に増加した(表3)。全体的な習慣的幸福度(MFHWで決定、0:もっとも悪い状態、5:もっとも良い状態)は1.1
±0.8から1.7±1.4に改善した(表3)。
 全体として医師と患者はタペンタドール治療を同様に効果的だと評価した。治療開始よりの患者の全体的な状態は両グループによって”改善”から”非常に改善”と考えられた(医師81.3%、患者80.7%)(図3)。
img271(文献から引用)
医師によれば、特に治療の有効性(79.8%)、QOL(69.7%)、全体的治療の成功(56%)、全体的治療の耐容性(55%)、胃腸管の耐容性(44%)、そして有効性と耐容性のバランス(38.5%)はこれまでの鎮痛治療と比べて改善した。さらに付随する鎮痛治療も患者の38.5%に減少されることが可能であった。
・安全性
 123名の患者のうち15名において22の副作用が記録された。1つの副作用(嘔気)が重度として記録された。さらに深刻な副作用は認められなかった。4つの副作用(腹部膨満、腹痛、γグルタニルトランスフェラーゼ上昇、膀胱痛)はタペンタドールPRにとってラベルのない副作用として評価された。これら副作用に対し、別の説明(臨床経過、付随する治療薬)が報告された。最も頻繁な副作用は胃腸管障害(11名)や神経性障害(9例)といった身体・器官系(system-organ classes)に関係していた。もっとも頻繁なものは嘔気(4名)、めまい(
4名)、嘔吐(2名)、倦怠感(2名)であった。全体的にタペンタドールPRによる治療は耐容性が良好であった。

(結論)
 タペンタドールによる良好な疼痛コントロールには疼痛関連した心理的そして身体的苦痛を伴い、QOLが改善した。全体的に慢性がん関連疼痛を認めるこれら患者の全身状態は根底にある疾患に関わらず著明に改善した。