呼吸困難感の評価法、よく疼痛評価で用いられるNRSで評価することも多いと思われます。しかし呼吸困難で苦痛ある患者にNRSで評価するのは負担が大きいとおもわれます。もっと簡便で実践的な評価方法は?とのことで著者らは4段階の順序分類尺度と11段階のNRSの相関について評価した論文です。

Practical Dyspnea Assessment: Relationship Between the 0-10 Numerical Rating Scale and the Four-Level Categorical Verbal Descriptor Scale of Dyspnea Intensity.
J Pain Symptom Manage. 
2015 May 22. pii


(背景)
 呼吸困難は、「強さで変化している質的に異なった感覚より成る呼吸不快感の主観的経験」と定義された。その経験は多くの生理的、心理的、社会的、そして環境因子間の相互作用より由来している。生命が限られた疾病のある人に一般的に経験する呼吸困難の有病率は心不全、肺がん、慢性閉塞性肺疾患の進行期にある患者にそれぞれ65%、70%、90%の頻度であると報告されている。呼吸困難はしばしば進行性疾患では治りにくい病態で、死が近づくにつれ呼吸困難の強さが増大しQOL、心理的満足度、そして社会的機能を失わせる。
 呼吸困難の評価は数十年間、研究がさかんに行われた領域であった。病態生理学的そして心理社会的といった呼吸困難の複雑な病因は呼吸困難の多くの特性を捕えるツールを開発する際に挑戦的であることを証明している。最近のいくつかのレビューでは現存する立証された測定ツールについて臨床と研究の場面での呼吸困難の複雑な経験をどのように捕えるかに関してのコンセンサスが不足していることを強調して調査している。評価基準の一連の範囲には、呼吸困難構成要素が含まれている単項目順序尺度、機能評価スケール、世界兆候目録、そして多次元呼吸困難スケールが含まれている。 
 スケールの選択は目的、状況、母集団により決定されている。精密さ、そして変化に対する応答性が必要であるなら、複雑な多項目スケールがより好ましいかもしれない。しかしながら、
日常の臨床ケアが患者により報告された転帰の多くの集団の中に組み込まれている時か又は短期間に繰り返し完了した時に、単項目呼吸困難評価スケールがより適切である様々な筋書きが存在する。単項目患者より報告されたスケールの中には、Visual Analogue Scale(VAS)、Numerical Rating Scale(NRS)、そして改訂Borgスケールが全て検証されているが、優先的に承認されたものはない。いくらかの単項目ツールの標準化された承認を経ていない評価ツールの急増はクリニックで信頼して実用的に用いることができる簡単な息切れスケールの必要性について強調していて、臨床ケアと臨床試験の間の根拠を効率よく説明している。そのようなツールは進行した生命の危機にある疾患を含めた疾病と背景を超えて患者と家族により理解されるべきである。このことを達成するために呼吸困難の主観的感覚に焦点をあてるべきで、通常は平行して他のスケールが用いられる。
 Wilcockらはがん患者で繰り返し評価するためにNRSはVASより実用的であると主張している。しかしながら、順序分類尺度(orderd categorical scales)(例えば、何もない、軽度、中等度、重度)はより実用的であるかもしれない、そして臨床的に意味されることを明白に伝達し、特に認知障害があるならば患者にとって難解なものではない。例えば、順序分類尺度は疼痛評価によく用いられていて、0-10のNRSとの関連について明らかにされている(図1)。
img277(文献から引用)
カットポイントにおいて少しの違いを認めるが、母集団や方法論に依存している。軽度と中等度の間のカットポイントは症候対照試験での適格性の下のしきい値制限としてしばしば用いられる。

(目的)
 呼吸困難感の評価のための0~10段階のNRSと4段階分類口頭記述尺度(Verbal Descriptor Scale: VDS)との関連性を明らかにすること。

(方法)
 この試験は生命の危機にある疾患の患者での難治性呼吸困難の緩和のための緩和的酸素投与と室内気を比較した二重盲検無作為化対照試験のサブスタディである。

(結果)
 239名の参加者で、61.5%は男性で63.5%はCOPDと診断されていた(表1)。
img272(文献から引用)
13名の患者は試験が始まる前に脱落し評価を完了できなかったため解析から除外した。さらに15名の患者は最終評価を完了する前に脱落した。全試験期間で、主に脱落のために朝のNRSによる評価の3.3%、そして朝のVDS評価の3.6%は参照することが出来なかった。
・横断研究(Cross-Sectional Analysis )
 NRSとVDSに関して、試験介入前に比較検討されていた(ベースライン、-1日)。朝評価時の現在の息切れは222名の参加者で記録された。41.9%が軽度、44.6%が中等度の息切れでNRSの平均値は4.5±2..3であった(表1)。NRSの評価はVDSのそれぞれのカテゴリーに鈴なりになっていた。NRS平均値とVDSカテゴリー間には直接関連性があった。NRSスコア0.3±0.5はVDSの無症状に、
8.2±1.1は重度に対応していた(表2)。
img273(文献から引用)
それぞれのVDSカテゴリーで患者のパーセンテージを増加させるNRSの範囲は首尾一貫していた(表2)。NRSとVDSの関連性はスピアマンの相関係数は0.77(P<0.0001)で強いものであった。同程度の強さの関連性はスピアマンの相関係数からベースラインでの他の3つの質問でみられた。たった今夕方:0.74、24時間平均:0.79、24時間最悪:0.76。
・縦モード解析(Longitudinal Analyses)
 試験期間の全9日間での4つの全ての質問に対する応答を組み合わせるとNRSとVDSの3882対の所見が得られた。解析の結果はベースラインでの午前の評価の横断研究からの応答と似たものであった。
VDSカテゴリーないのNRSの分布はベースラインでの午前中の評価において観察されたのと似たものであった(図2)。
img274(文献から引用)
特に、NRSスコア(SD)はVDSの何もないは0.61(1.0)、
VDSの軽度は3.4(1.4)、VDSの中等度は5.8(1.4)、そしてVDSの重度は8.2(1.5)であった。VDSとNRSのスピアマン相関係数は0.78であった。
・カットオフ解析(Cutpoint Analyses)
 縦モード解析のデーターを用いた時、NRSによるVDSカテゴリー分布解析を行うとNRSの0の94%はVDSでの何もないに一致していた(図2)。NRSの1では、返答の34%しか何もないに一致しなかった。残りの応答は軽度の疼痛に一致した。同様に中等度から重度の移り変わりは明らかであり、NRSの8の患者の71%は中等度の息切れと答えた。
NRSの9では70%が重度の呼吸困難と答えた。軽度から中等度の移り変わりは明らかではなく、NRSの5の49%は軽度の呼吸困難と答え49%は中等度の呼吸困難と答えた。
 VDSカテゴリー内のNRSスコア分布に基づいて、著者らは2つの異なったカットオフモデルの性能特性について調査した。モデルAでは、NRSの0はVDSの何もないに、NRSの1~4はVDSの軽度に、NRSの5~8はVDSの中等度に、NRSの9~10は、VDSの重度に一致していた。モデルBでは、NRSの0はVDSの何もないに、NRSの1~5はVDSの軽度に、NRSの6~8はVDSの中等度に、NRSの9~10は、VDSの重度に一致していた(表2)。両者のモデルにおいて、NRSからVSDへの正確な転換はだいたい75%であった。しかしながらモデルAは低くコード化する失敗は少なかった(NRSは患者が対応する時間に報告したものよりも低いVDSに帰する)。モデルAは中等度から重度の呼吸困難に対し87%の敏感度、78%の特異度をもたらすが、モデルBはたったの63%の敏感度しかもたらさないが93%とより特異的であった(表3)。
img275(文献から引用)

(結論)
 呼吸困難においてVDSとNRS尺度の間には強い相関がある。呼吸困難でのVDSとNRSの関連の提唱された実践的カットポイントは0は何もない、1~4は軽度、5~8は中等度、9~10は重度である。