最新のジャーナルのLetterに掲載されている日本人からの論文です。望ましい死(good death)と死別した介護者の外傷後成長(Post-Traumatic Growth)の関係について述べられています。
勤務医時代、「がんサバイバーシップ」ってタイトルで講義したときのスライドで、少し外傷後成長についても説明しています。
がんサバイバーシップ.pdf

Association Between "Good Death" of Cancer Patients and Post-Traumatic Growth in Caregivers. 
J Pain Symptom Manage.  2015 Aug;50(2):e4-6.


編集者へ
 死別は一般的に人生において最も精神的外傷を与えるイベントの1つとみなされている。がんは世界中で死亡の主因の1つである。死別後の介護者における苦悩とQOLについて調査している多くの研究が存在し、外傷後成長(Post-Traumatic Growth : PTG)は精神的外傷を与えるイベントを経験した人々によって報告されたポジティブな転帰の1つである。がんで死別した介護者におけるPTGについて調査して研究がなされてきた。しかしながら成人の愛する人を失った死別したがん介護者におけるPTGについて調査された研究はほんの2、3しか存在しない。さらに最近の研究は死亡したがん患者の終末期のQOLは死別した介護者のQOLに影響を及ぼすことを示唆している。しかしながら患者の終末期のQOLと死別した介護者のPTGとの関連はめったに調査されない。この研究の目的はがん患者の終末期のQOLと死別した介護者のPTGの関連について調査することである。

(方法)
 著者らは2011年10月から2014年1月までの間、京都府立医科大学でがんで愛する人を失った死別介護者に質問票を送付した。患者の適格基準には、進行がんの診断、20歳以上の年齢、最後の入院において1日以上の入院期間、親しい介護者の協力が得られることが含まれていた。この研究は京都府立医科大学の施設内倫理委員会の承認を得た。
 研究期間中265名の患者ががんで死亡し、164名の患者が20歳以下(2名)、病院の滞在期間が24時間以下(7名)、支援してもらえる介護者がいない(32名)、送付した質問票を主治医から同意が得られなかった(57名)、主治医の興味が得られなかった(62名)、その他(4名)のために除外された。 適格101名の死別した介護者のうち、53名の介護者は質問票に答えず3つの質問表は住所不明のため返された。著者らは45名の質問票の答えを得、10名が脱落し結局35名の質問表を解析した。死亡患者の社会人口統計学的データーは電子カルテから得た。患者の最後の入院時での終末期のQOLと緩和ケアの質は望ましい死の目録(Good Death Inventory:GDI)と全ケア満足度尺度(overall care satisfaction scale)を用いて死別した介護者により評価された。
 社会人口統計学的データーと死別した介護者の健康状態の転帰は質問表の答えから得た。著者らはPTGを評価するために外傷後成長目録(Post-Traumatic Growth Inventory : PTGI)の日本語版にあてはめた。精神衛生を評価するために病院不安および抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale : HADS)日本語版が用いられた。外傷後ストレス症状を評価するために改訂出来事インパクト尺度日本語版の侵入症状サブスケール(1、2、3、6、9、14、16、20)が用いられた。死別した介護者のQOLを評価するために短い形健康調査8つの項目(SF-8)を用いた。ガイドラインに従って、SF-8精神的構成要素概要(MCS)と身体的構成要素概要を評価した。社会人口統計学を含む変数と社会心理学を含む変数間の二変量の通常の相関関係を評価した。これらの計算はSPSSバージョン19.0を用いて行った。

(結果)
 35名の死亡患者と死別した介護者の特性は表1に示されている。
img278(文献から引用)
PTGIはGDIと相関関係が認められた(r=0.47、P<0.01)。GDIはまた全ケア満足度と相関関係が認められた(
r=0.69、P<0.01)。GDIとPTGIは死別した介護者において他の健康転帰とは何ら関連は認められなかった。
 死別した介護者における健康転帰間の相関関係に関しては、
改訂出来事インパクト尺度の侵入症状サブスケールの影響はHADS(r=0.60、P<0.01)やMCS(r=-0.57、P<0.01)と関連していた。HADSはMCS(r=-0.73、P<0.01)と身体的構成要素概要(r=-0.40、P0.02)と関連していた。 

(コメント)
 介護者のPTGと終末期における患者のQOLは著明に関連していた。著者らは
介護者のPTGと終末期における患者のQOLの原因となる関連を発見することは出来なかったが、研究結果は望ましい死は死別した介護者においてポジティブな精神的変化が起きるかもしれないことを示唆した。しかしながら、ある研究者らはPTGを引き起こすにはストレスは重度であるべきだと強調している。そのうえ、未だにPTGの概念構造の不一致が存在している。著者らは死別の複雑な精神過程を明らかにするためにより大きなサンプルの縦断的研究が必要である。
 以下の限界は言及されるべきである。第一に、この研究は1施設での研究である。第二に、サンプルサイズはマイナーな影響を見つけるにはあまりに少なかった。第三に、患者のQOLの評価は後方視的方法に依存していた。過去の出来事の回想は死別した介護者の現在の精神状態の影響を受けるかもしれない。第四に、選択バイアスを考慮されるべきである。著者らは質問票を送る前に主要な主治医と相談し、結局多数の死別した介護者を除外した。第五に、横断的デザインであるため著者らは死別した介護者の転帰におけるPTGの時間経過の影響を評価しなかった。